第1章 出会いとそれと
その日は茹だるような暑さに身も心も熱に浮かされて、
変に浮き足だって、気を急かされて落ち着かないような、奇妙な気分だった。
からりと晴れた空、
炎天下のせいですっかり中身が溶けきったラムネの瓶を片手に呆然と立ち尽くす俺
蝉の鳴き声すら煩わしく思わなかったのはここがもしかしたら、もしかしたら俺の住んでいる世界とは別の世界なんじゃないだろうかと、なんとも可笑しな錯覚に囚われていたせいだろうか。
「……、
あなたは誰…?」
目の前の黒髪が揺れ、鈴がりん、と鳴ったような静かな声音が二人だけの空間に静かに響く。
俺の眼前のそれは、容姿から全て、何から何までが現実離れした、突飛な雰囲気を纏っていた
「お、れは…」
震える声で、絞り出すように。
ぎゅう、と握りしめた瓶に一筋、手汗が伝った
「……霧隠、才次」
「…きり、がくれくん。…へえ、
あは、変わった名前ですねぇ」
そう
これが、式神との出会いであり、
初恋、だった。
中学二年の、夏。