第1章 寝起きとアイドル
「おいナギ!陽菜乃が困ってるだろ?」
六弥ナギの後ろから声がして、声を目線で辿る。声の主である和泉三月は「よ、おはよ!」と私に笑顔で挨拶すると、再びナギに声をかけた。
「お前がなんでも知りたがる癖は、俺たちもよく知ってるし俺もその気持ちは分かるぜ?けど見てみろよ、陽菜乃が怖がってるぞ。」
いつの間にそんな表情をしていたのだろうか。少し誤解を生んでしまったかもしれない。現に私は怯えているわけではなく、この場からどう逃れようか考えていただけだ。
「Oh....女性を困らせてしまうとは...申し訳ありません、ご無礼をお許しください。」
ナギは、悲しげに表情を歪ませると私の片手を両手で包み込み丁寧に謝ってくる。
ぐ、流石女性扱いが慣れてる...
謝り方すら抜かりない...
「だ、大丈夫だよ。相手を知ろうとする気持ち、悪くはないと思うから!」
私に関してはあまり干渉してほしくないけど...。
「でもいつか、あなたの秘密を私達に話してくれることを待ってます」
最後に添えられた一言に苦笑を返すと、三月が頭を小突くようなやり方でナギの腕を叩いた。多分、頭を叩きたかったけど足りなかったのだろう。身長が...
「だから、それが困らせてるんだって!ごめんな陽菜乃。でも、困ったことがあったらなんでも相談してくれよ?」
三月はそういうと、「待ってくださいミツキ!まだヒナと昨日のまじこなの話をしていないです!」とごねるナギを半ば強制的に引っ張って行った。