第1章 寝起きとアイドル
私の目の前に現れたのは、アイドリッシュセブンのメンバーであり最年長の二階堂大和だった。
「今日はドラマの撮影があるんだよね」
一応私も、アイドリッシュセブンに関わっている身であり彼らのスケジュールは大体把握している。
ではどうして予定を話してくるのか。
彼は“わざと”私にスケジュールを話しているのだ。
「そうですか。」
「仮にも“先輩”に随分冷たいんだな?」
「...どっちがよ」
「まぁいいや。1時くらいに頼むわ」
「っはぁ!?いい加減に」
「静かにした方がいいんじゃねえの?」
「...っ」
「じゃ、また後でな。」
ひらひらと手を振りながら私の横を歩いて行った男の背中を、思い切り睨みつけた。
彼が伝えたいのはスケジュールなんかじゃない。
その言葉に隠された“指示”を、私に言いに来たのだ。
この男は嫌いだ。アイドリッシュセブンのマネージャーである紡ちゃんではなく、私に予定をわざわざ話してくる時が特に。
「(呼び出しのサイン...)」
はぁ。と誰にも聞かれることのない悲観のため息を漏らし、私はようやく自分の身支度を整えるために歩き出した