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【YOI】『少年』の最期【男主&ユーリ】

第2章 今までの君と、これからの君。


時折メモに何かを書き留めながら、ひとしきりユーリの話を堪能した純は、次に今回のプログラムの大まかな構成について尋ねた。
「ノービスの頃からユリオくんはサルコウと相性がええみたいやから、成長痛や足の具合と相談して3回転か4回転か決めよか。でも、シーズン前やから無理は禁物やで。後はイーグルからの2Aかコンビネーションと…」
「あ、ああ…」
「スピンは…まだビールマンはいけそうか?でも、ユリオくんならレイバックも綺麗やと思うけど、どっちがええかな?」
「…えっと」
「今のユリオくんの魅力を存分に発揮できるEXを、僕は作りたいんや。一緒に」
「一緒に、か?」
「ん。だって、君の為のプログラムやし。僕、ユリオくんの事もっといっぱい知りたいねん」
微笑みながら告げてきた純に、ユーリは柄にもなく胸の内側から何か温かいものがジンワリと浸透していくのを覚える。
そして形や厳しさは違えど、あのリリアからも昨シーズン当時の自分が出せる最高のパフォーマンスを作って貰っていた事を、今更ながら思い知らされたのである。
(そんなババア…リリアに対して、俺は何をした…?)
ユーリの僅かな表情の変化に気付いた純は、わざと強めに彼の肩を叩いて我に返らせた。
「サユリ…」
「──もう君は、彼女への謝罪と感謝は済ませとる。足りんと思うてるんやったら、その気持ちも一緒にこのプロにこめなさい」
感情に瞳を揺らめかせているユーリに、純は力強く首肯する。
暫しの沈黙の後、小さくだがハッキリと頷きを返してきたユーリを見て、純は右の頬に笑窪を作ると、タブレットから音楽プレイヤーを呼び出した。
「さっきユリオくんの話聞いてから、僕の頭の中でずっとこの曲がリフレインしとんねん」
タブレットに差し込んだイヤホンをユーリに渡しながら、純はある曲を再生する。
数秒置いて、何処か民族的な色を帯びた軽快なスケルツォが、ユーリの鼓膜を刺激した。
「僕の大好きなピアノ五重奏の1つや。4楽章から成り立っとるピアノ五重奏ってな、ほぼ必ずと言ってええほど3楽章目が舞曲なんやで」
「舞曲…」
「確かバレエスタジオにピアノあったよな。僕の演奏で良かったら、どんな感じか聴いてみるか?」
「サユリが弾くのか?」
「流石に練習と本番は、どっかから音源借りなあかんけどな」
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