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【YOI】『少年』の最期【男主&ユーリ】

第2章 今までの君と、これからの君。


「さて、ユリオくんのこれまでのスケート人生について、聞かせてもらおかな」
「はぁ?何でンな事」
「勿論、今回のプログラム作りに必要やからや。無理に聞き出すような真似はしいひんけど、スケート始めた切欠や思い出に残るような話があったら、教えてくれるか?」
至極真面目な顔で問う純に、ユーリは困惑する。
どう答えようか迷っていると、自分が話し易いようにする為か、純の方から打ち明けてきた。
「ちなみに、僕がスケートに出会うたのは6歳の頃。ホンマはアイスホッケー習おうとしてたんやけど、たまたまそこのリンクにおったスケートのセンセに『君はフィギュアの方が向いてます』て引き抜かれてん」
「何だそりゃ」
「けど、いざ始めてみたら面白うてな。僕、家では歳の離れた3姉弟の末っ子でいっつもみそっかす扱いやったから、唯一スケートだけが自分の誇れるモノだったんや。ま、結局それも世界どころか、日本にすら上には上がおったんやけど」
苦笑交じりに自分の境遇を語りながら、他にも「当時練習に付き添ってくれた姉が、出来が良かった時はあんみつやアイスクリーム、悪かった時はチープなチョコや冷やし飴を帰りに奢ってくれた」エピソードでユーリを笑わせる。
その内にユーリも少しずつだが、自分の事を話し始めていた。
ロシアでは、家庭水準の高くない人間がのし上がるには、スポーツや芸術その他で結果を出すしかない。
ノービスの頃から一家の大黒柱として生きてきたユーリだが、だからといって決してスケートが嫌いな訳ではなかった。
人より上手に滑れるようになるのは面白かったし、祖父のコーリャから「ユーラチカが1番だった」と褒められるのが、何よりも嬉しかったからだ。
「始めたばっかのガキの頃は、吹きっさらしの屋外リンクとかで練習させられてよ」
「ゴーリキー公園みたいな?」
「そんな良いモンじゃねえよ。まさにリンクとは名ばかりの池やプール!冬の外気が刺さって寒いんじゃなくて痛いんだぜ?」
「あらー、そら冬の京都より遥かにキッツイなあ」
「でもな。そんなクッソ最悪なリンクだったけど、ガキの俺には時折ちらつくダイヤモンドダストが、凄ぇ綺麗に見えたんだ。爺ちゃんやコーチの制止も聞かずに、キラキラ光ってるそれにバカみてぇにはしゃぎ回って…」
そんな追憶にふけるユーリを、純は微笑ましく見守っていた。
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