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【YOI】『少年』の最期【男主&ユーリ】

第1章 しっぺ返しは突然に。


リリア・バラノフスカヤは、ユーリの来訪と彼の言動に、顔に出さねど内心で驚きを隠せないでいた。
正直「あの悪童が…」と思わずにはいられなかったが、リリアはティーカップを傾けつつ、彼の言葉に耳を傾ける。
「…話はそれだけだ。自分のやらかした事に対して今更言い訳はしねえ。でも、昨シーズンのGPFで俺が優勝できたのは、他でもないアンタが俺の為に作ってくれたプロのお蔭だと思ってる」
「……」
「…嘘じゃねえぞ?」
それまで下げていた頭を僅かに動かしながら上目遣いをしてきたユーリに、リリアはほんの一瞬だけ口元が緩みそうになったが、直ちに表情を引き締める。
「判りました。ユーリ・プリセツキー、貴方の謝罪を受け入れます。ですが、私の考えは変わりません。あのプログラムは」
「わーってるよ。もう『今の俺』じゃ、あのプロは滑れねえって事」
真っ直ぐ己の目を見て応えてきたユーリに、リリアは彼には気付かれぬよう瞳孔を開いた。
そして、ユーリが去った後にティーカップをテーブルに置くと、その鉄面皮をほんの少しだけ緩めて誰にでも無く呟く。
「…喜ばしい事でもあるのに、子供の成長というのは何処か寂しいものね」

リリアの所から戻って来たユーリは、純にその旨を報告する為に彼の姿を探した。
途中偶然勇利に会い、純が視聴覚室にいる事を教えて貰うと、そのまま移動する。
「サユリ!」
禊を済ませたような解放感に、ついノックも忘れて勢い良く視聴覚室の扉を開けたユーリだったが、そこで一心不乱に自分の過去の演技の映像を見つめている純の姿を目の当たりにして、思わず口を噤んだ。
「ああ、お帰り。ヤコフさんに頼んで、ユリオくんの昔の演技を観とるんよ。ジュニアの幾つかは動画サイト漁れば出てくるけど、ノービスまでは流石にあれへんからなあ」
「何でンな昔のまで…」
ユーリとしては、過去の未熟で恥ずかしい演技もあるのであまり良い気はしない。
しかし、真剣な表情でそれらを観ていた純は、やがて顔を上げると次のように言った。
「僕は、今この瞬間の君の為のプロを作りたいと思う。日数がないから、音楽は僕の独断で選ばせてな」
「なあ」
「ん?」
「俺がホントに詫び入れてきたかって、訊かねぇの?」
「君が嘘吐くコやないの、僕知ってるもの」
さらりとした返事に、ユーリは仄かに頬を染めた。
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