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【YOI】『少年』の最期【男主&ユーリ】

第1章 しっぺ返しは突然に。


減らず口をききながらも、先程リンクで自分に声を掛けてきた時、ヴィクトルと勇利を何処か気遣わしげに眺めていたユーリの姿を思い出すと、純は口元を僅かに綻ばせる。
「判った。僕で良ければ付き合うてもええよ」
「本当か!?」
「但し。その前に振付のセンセのトコ行って、これまでのお礼と迷惑かけたお詫びしておいで」
喜んだのも束の間、純から難題を出されたユーリは露骨に顔を顰めた。
「どうせ今更詫び入れたって、あのババアが解禁してくれる訳じゃねぇし、意味ねぇよ!」
「──何、寝ぼけた事抜かしとるん?」
直後、それまでのんびりとした物言いだった純の口から、ドスの利きまくった硬質な声が飛び出して来た。
「ええか。謝罪いうんは、自分の落とし前やケジメつける為にするもんや。それで相手が許してくれるかどうかは別の話。昨シーズン散々世話になったんやろ?人として、最低限の礼儀も仁義も弁えられへんような器の小さいスケーターの滑りに、なんぼの価値があるいうねん」
昨年末、長谷津でヴィクトルと対峙していた時に垣間見た純の底のない湖のような闇を帯びた黒い瞳に、ユーリは戦慄した。
以前、何かの折りに勇利から「純は礼儀に厳しい所がある」と聞いた事があったが、これは想像以上である。
「スケーター云々のご託ほざく前に、まずは人としてのケジメつけて来なさい。全てはそれからや」
「判ったよ!…クソっ」
「今、何か言うたか?」
「何でもねぇ!」
ただならぬ純の気配に完全に圧倒されてしまったユーリは、半ば逃げるようにその場から走り去った。

「何なんだよ、サユリのあの妙な迫力は…こんなんで俺、本当に間に合うのか?」
しかし、純しか頼れない今は彼の言う通りにするしかない。
内心かなりの気まずさを覚えながら、ふとユーリの脳裏にある事が浮かぶ。
「そういえば俺、ヤコフ達以外に叱られたのって、いつだっけ…」
険悪な関係ではないが自由奔放な母親に、寡黙に見守ってくれた祖父、そして長谷津では優子に温かい言葉をかけて貰っていたが、このように親身になって説教をされたのは、あの2人以外には純が久し振りだったのだ。
『散々世話になったんやろ?』
「…ちっ」
舌打ちをしたユーリの足は、しかし真っ直ぐリリアの元へと進んでいた。
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