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【YOI】『少年』の最期【男主&ユーリ】

第1章 しっぺ返しは突然に。


「俺は、非力だって言いてぇのかよ!?」
「非力やのうて、未熟。悪いけど、シニア1年目の選手が突貫で作ったEXと、長年の経験その他元に築き上げた僕と勇利の『SAYURI』を、一緒にせんといて欲しいわ」
「ぐ…」
「それに、勇利やヴィクトルはじめベテランの選手らがこれまで長い間現役でおる事が出来るんは、彼らがこの世界に居続けられる理由と力があるからや。…僕と違うてな」
かつては勇利の同期だったが、故障により競技を中断し、昨年のジャパンナショナルで現役を終えた純の言葉は、ユーリの鼓膜と心を刺激する。
「確かに君は強い。せやけど今の君の強さは、君1人の力だけで成り立ってる訳やないで。コーチや振付師、君の為に動いてくれはる人達の事、ちょっとでも考えた事あるか?」
そう問われて、ユリオは気まずそうな顔をする。
「それに振付のセンセは、君に『色々な意味で』て言うたんやろ?」
「…それがどうかしたかよ」
「そのセンセの言う通り、君はそろそろ色んな意味で『子供』から卒業せなあかん時になったいう事や」
覚えがないか?という純の質問に、ユーリはロシアナショナルが終わった頃から成長痛が起こり始めたのと、先日夏用の衣服を出そうとしたら、お気に入りだったTシャツをはじめ何着もの衣服がキツくなっていたのを思い出す。
昨シーズンから、自分がこの容姿でいられるのは僅かな間だという事を、頭では理解していた。
フィギュアスケーターならば誰もが通る『成長期による体型変化』という壁が、いよいよ本格的にユーリにも迫って来たのである。
「前に長谷津で会うた時よりも、背ぇ伸びとるみたいやしな。今シーズンを迎える頃には更に伸びるかも知れへん。それもあるから、振付のセンセは君に昨シーズンのプロを滑る事を認めんかったんや」
「……」
「で?君はどうするつもりなん?」
「…俺がガキだったってのは判った。でも、今はサユリしか頼れる奴がいねぇんだ。だから…」
アイスショー用のプロ作りに協力して欲しいと懇願するユーリを、純は努めて表情を変えず一瞥する。
「何で僕に?」
「ヤコフはババアに止められてるし、ジジイは…選手とカツ丼のコーチなんて二足の草鞋してやがるからよ。あいつらが崩れんのは勝手だけど、それを俺のせいにされたらたまんねえし」
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