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【YOI】『少年』の最期【男主&ユーリ】

第1章 しっぺ返しは突然に。


「…なるほどね。この間のGPFのEXかあ」
空になった食器を返却口へ下げた後、純は自分も食後の紅茶を貰うと再度テーブルに戻って来る。
「幾ら何でもこんな土壇場になって『滑るな』だなんて、あのババア性格悪すぎだろ…それに、カツ丼だってジャパンナショナルん時に、EX変えてたじゃねえかよ」
「お、言うたな」
不満げな顔を隠さず口を尖らせているユーリに、純は片眉をつり上げた。
「ほんなら聞くけど、君はあのEXで何を表現したかったん?」
「え」
「ちなみに勇利は、今後世界を相手に戦い続ける為、何よりも競技復帰したヴィクトルを倒す為には、これまで彼から教わってきた事をなぞるだけじゃダメだ、ヴィクトルにも真似出来ない新たな表現が欲しいから、て言うてきたわ。今でこそ結果オーライやったけど、はじめは流石の僕も腸煮えくり返りそうになったからな。僕の渾身のプロ舐めとんのか!て」
スケート界やスケオタの間で「上林純の代名詞」とも呼ばれる位、彼の『SAYURI』には様々な要素と想いが込められていた。
それを安易に他人に滑られる事を良しとしないのは、流石のユーリも理解できる。
「せやけど勇利は、僕の『SAYURI』を見事に自分なりの解釈で表現してみせた。あれが、僕が勇利には到底敵わん理由の1つや。あの『デコ』にすら引き出せへんかった勇利の新たな魅力、君も感じたやろ?」
「ま、まあ、豚にしては上手く化けてたと思うけどよ…」
当時『SAYURI』を舞う勇利から目を離せなかった事を隠しながら、ユーリは力無く零す。
「対して、君のEXは?」
「…俺だって、あのEXで俺なりの想いをぶつけたつもりだ」
「ん。僕もTVで観てたけど、確かにキレッキレでええ動きやったわ。けど、それだけ」
サラリと告げられた言葉に、ユーリは渋面を作る。
「競技プロやGPSでのEXと比べると、良かったのは動きと派手さだけ。生憎心に響くものは、僕には何も感じられへんかったわ。自分の主観と他人の評価が合わん事はあるけど、ユリオくんの場合はそれ以前の問題や」
「どういう意味だよ」
「競技者としても人としても、君は未熟って事。あのEXも、君が成人迎えた頃なら素晴らしいプロになるかも知れへんけどな」
穏やかな笑みは崩さぬものの容赦のないダメ出しに、ユーリは叱責される以上に落ち込んでいた。
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