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【YOI】『少年』の最期【男主&ユーリ】

第1章 しっぺ返しは突然に。


「サユリ、」
「…ん?ユリオくんか。どないしたん?」
リンクサイドからの呼び掛けに、純は振り返った。
現役時代の代名詞とも呼ばれたプログラムからいつしかユーリに『サユリ』と呼ばれるようになったが、「僕女性やないねんけど、まあええわ」と、苦笑交じりに受け入れたという経緯がある。
勇利とはまた違った穏やかな表情の純に言葉を続けようとしたユーリだったが、彼の隣で自分に視線を向けている勇利とヴィクトルに気が付くと、途端に舌が凍りついたように動かなくなってしまう。
「…ユリオくん?」
「あ…」
心なしかうつむき加減でこちらを伺っているユーリの意図を何となく察した純は、勇利とヴィクトルの2人に「僕、ちょっとユリオくんとゴハン食べてくるわ」とリンクから出た。
「勇利、僕が戻って来るまでに1回通しで確認しといてな」
「判った。また後でね」
「ついでに『デコ』、僕のおらんトコで勝手に振付変えたりしたら、要素1つにつきあんたの痛点1発突くからな」
「え~、俺を『突く』相手は1人だけなんだけど」
「…アホか!真っ昼間っから何言うてんねん!」
「ヴィクトル!振付師の手掛けたプロを、何の前触れもなくいじくったり変えたりしたら、良い気分しないの当たり前でしょ!」
「勇利達に言われたくなあ♪去年のジャパンナショナルの一件、忘れた訳じゃないよね?」
そんな勇利達の会話は、純に連れられて歩くユーリの胸に、小さな棘となって突き刺さっていた。

「…悪ぃ。練習中だったのに」
「丁度、僕もお腹空いてた所や。こっちこそ付き合うてくれて有難うな」
さらりと純の口から出た自分への謝辞に、ユーリは何処かむず痒いものを覚える。
施設内の食堂に到着した2人は、なるべく人目につかない席を確保すると、純は自分の昼食に『ウハー』と呼ばれる魚と野菜のスープにパン、そして食欲がわかないというユーリの為に温かい紅茶と菓子を取って来た。
「適度な糖分補給は、頭の働きにもええんやで。何やちょっとシリアスなようやから、詳しい話は食べてからでええか?」
返事の代わりにユーリは頷くと、純に貰った菓子を口に含みながら紅茶を一口飲む。
菓子の甘みと温かな紅茶の香りに少しだけ気分が和らいだユーリは、やがてポツポツと事の次第を話し始めた。
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