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【YOI】『少年』の最期【男主&ユーリ】

第3章 『少年』の最期


感情任せに言葉を発した後で、純は眉を下げると力無く呟く。
「…悔しいなあ。きっと、これが世界を狙える奴とそうでない奴との違いなんやろなあ」
不完全とはいえ、何度か見せただけの自分のドーナツスピンを実行してみせたユーリに、純は心の底から羨望と嫉妬の感情を抱く。
「ユーリは、あれでも『本物』を見極める力を持っているわ」
すると、そんな純の耳元に、厳しくも何処か温かなリリアの囁きが聴こえてきた。
「だからこそ、ユウリ・カツキ同様貴方に興味を持った。そして今回、貴方に助けを求めて来たのよ」
「あ、同感。勇利ほど塩じゃないけど、ユリオも自分に興味のないものにはドライだし。あれでもお前がロシアに来るの、楽しみにしてたんだよ?『サユリ、まだ来ねぇのか』って」
「言ってたね。純が鉄道経由でこっちに向かってて中々ピーテルに到着しなかった時も、真っ先にSNS探してたし」
ヴィクトルや勇利の言葉を聞いて、純は目を丸くさせる。
「貴方が退いたのは、競技だけでしょう?1人のスケーターとしても、まだやるべき事があるのではなくて?」
リリアの視線を受け止めた純は、はっとした表情をした。
「そうだよ、去年の全日本でスケートはジャンプだけじゃないって教えてくれたのは、純じゃないか。身体はまだ動くんだから、自分の振付を自分で見せる事も出来るよね?」
「俺より若い癖に、老け込むの早過ぎだよ。膝を言い訳に、勝手に自分の限界決めつけちゃってない?」
「──やかましいわ、デコ」
そうヴィクトルに返すものの、彼らの言葉に純は、自分が限界だったのは『競技選手として』だった事を、改めて思い直した。
リンクで舞うユーリとリリアを交互に見た後で、口を開く。
「ユリオくんを通じて僕にも勉強の機会を与えてくれて、ホンマに有難うございました。貴方は、これまでずっと僕らを見守ってくれはりましたね」
「ユーリの振付師として、見込みがなければ早々に引き離すつもりでしたが…未熟ながらも良くやってくれました。あの子が色々な事に気付けて成長出来たのは、貴方のお蔭でもあります」
「リリアさん…」
「だけど、これから更に努力が必要ね」
「はい」
差し出された手を握り返しながら、純は再び視線をユーリへと移した。
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