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【YOI】『少年』の最期【男主&ユーリ】

第3章 『少年』の最期


『本当に?僕、輝いてた?』
『ああ、誰よりもユーラチカが一番だったぞ』
『それならじいちゃん、僕もっと上手になっていつか世界の大きなリンクで輝いてみせるよ。だから、明日も練習見に来てくれる?』
『…儂で良いのか?』
『うん。僕、ママがいなくても大丈夫!』
自分の小さな手を引く祖父に向かって、幼いユーリは己の決意を元気いっぱいに宣言したのだった。

プログラムの前半が終わり、曲調が最初の主題をベースにしたゆるやかなメロディになる。
ユーリはそれに合わせながらイーグルからの2Aを決めると、フライングシットスピンに入る。
(故郷のモスクワ出てピーテルに来てから、俺はただ夢中で滑り続けてた。試合に勝てば賞金が出て、じいちゃん達に楽させてやれるって…だけど、いつの間にか俺は自分がどうして滑りたいのか忘れてたんだ)
同年代の中でも頭一つ抜きん出ていたユーリは、その内にあまり真面目に練習をしなくなっていた。
似通った歳のライバルがいない所為か、ヤコフの叱責やヴィクトルの指摘にも「試合で勝てばいいだろ」と、取り合わなかったのだ。
(だけどある日、そんな俺の前にとんでもない奴らが現れた。それが…)
「ユリオ、昨シーズンよりも体幹がしっかりしてるね。最近背が伸びて来てるから、ポジション維持するのも大変だろうに」
「これもリリア女史の特訓の賜物だね。ん?あれは…」
「ユリオくん?」
ヴィクトルの後で、純は思わず無防備な驚きの声を上げた。
本来の構成はシットスピンから足を変えて通常のキャメルスピンの予定だったユーリが、フリーレッグを掴みながらドーナツスピンの姿勢を取ったのだ。
(それがお前らだ。2人の日本人…『カツ丼』と『サユリ』。勝生勇利と上林純…!)
初めて披露するユーリのドーナツスピンに、会場から歓声が沸いた。
「ああもう…妙にこの頃空き時間にドーナツスピン見せてくれ、て言うてたと思うたら!」
「だけど、今後ユリオが成長してビールマンが難しくなった時に使える戦法だと思う。純も現役時代そうだったよね?」
「やっぱり、引退してもお株を奪われるのはイヤなんだ?」
「アホ、僕のスピードに比べたらまだまだや!」
引退したとはいえ、やはりそこはスケーターとしての矜持があるのか、純は面白そうに笑う勇利達とは対照的な顔をした。
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