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【YOI】『少年』の最期【男主&ユーリ】

第3章 『少年』の最期


ユーリの真摯な眼差しを受け止めた純は、彼の両肩に手を置くと少しだけ声を低くさせながら再度口を開く。
「今から僕の言う事、覚えといてくれるか?」
「?何だよ」
真剣な純の表情を見て、ユーリは数回瞬きする。
「今日の事、出来れば忘れないで欲しい。これから先、スケートが辛いと感じる事があった時も、君が大人になった後も、そして…いつか君が競技の世界から退く日が来ても。ずっと、ずっと…」
「サユリ…?」
訝しげなユーリの声に、純は我に返る。
「…ごめんな。これは僕の勝手な我侭や。僕と違うてユリオくんには、無限の未来や可能性が広がってるていうのに」
この数日で、彼が随分と心身ともに成長を遂げているのを純は傍で感じていた。
そして同時に、もうすぐ彼が『少年』ではいられなくなる事も。
これからユーリが、成長期をはじめとする様々な試練に立ち向かわねばならない事を考えながら、純は自分がプログラムに込めた想いを、彼に少しでも共有して欲しかったのだ。
「俺からもいいか?」
すると、肩に載せられた純の手を取りながら、ユーリが思いの外穏やかな顔で尋ねてきた。
「『次』はこんな形じゃなくて、正式にお前に頼むからな」
「え?」
「…まさか、もう俺の相手すんの嫌になったか?」
「そんな事はないけど…」
「サユリのお蔭で、俺は自分やスケートの事に色々気付けた。だから、次は色んな意味で成長した俺の振付やってくれよ。現役時代にサユリが勝てなかったカツ丼を、俺がお前の振付で倒すのも、面白そうだろ?」
「…いっぱしの口叩くようになったやんか」
幼くも何処か頼もしいユーリの瞳に見つめられて、純は感傷的になっていた自分の弱い心を振り払うように頷いた。
「ほんならまずは、僕の作ったプロを君がキチンと滑れるか見せて貰わんとな」
「任せとけ。絶対お前に『素敵』って言わせてやるぜ!」
改めて純の手を力強く握り締めたユーリは、係員の誘導で待機場所へと移動した。
そんなユーリを見送る純の背後に声がかかる。
「純、昔から僕に何度も勝ってたじゃない」
「どれも、君のミスに助けられた上でな」
「で、先に君の振付で滑った僕には素敵って言ってくれないの?」
勇利の問いに、純は気まずそうに笑った。
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