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【YOI】『少年』の最期【男主&ユーリ】

第3章 『少年』の最期


振り返ると、海外からの招待選手の1人であるカナダのJJことジャン・ジャック・ルロワが、ユーリを面白そうに眺めながら歩み寄って来た。
いつもなら、猫が毛を逆立てる勢いでムキになる所だが、不思議と今のユーリにそんな感情は湧いてこなかった。
何故だか良く判らないが、気が付くとユーリは不敵な視線をJJに送りながら口を開いていたのだ。
「どうだ、羨ましいか?今なら俺、このまま美少女コンテストに出ても優勝する自信あるぜ?お前にはぜってー無理だもんな」
ユーリの反応が予想外だったのか、JJは僅かに目を見開くと言葉を返した。
「このJJも、子供の頃はそりゃー可愛かったんだぜ?周囲からは『まるで天使のようだ』と言われてた位だからな」
「でも、過去形だろ?」
「む…」
口ごもってしまったJJを尻目に、ユーリは彼に背を向け歩き出す。
「今回は、君の負けだね」
そんなJJの横を、ヴィクトルと勇利達が通り過ぎて行ったが、彼らを見送りながらJJは口中で小さく呟いた。
「ユーリ・プリセツキーの雰囲気が、まるで子供だったこれまでと違っていたような…?」

フィギュアの原点はここにあり、と言わんばかりの勇利の繊細な演技に、客席の至る所からため息が漏れる。
チェンバロ演奏によるバッハの『無伴奏チェロ組曲・第1番』のメヌエットをBGMに、勇利はリンクの上で見事な図形を描いていく。
同時にそんな勇利のEXプロを作った新米振付師の噂も飛び交っているのを、ユーリは勇利の演技を観つつ誇らし気に聞いていた。
「…俺のプロだって、その噂の振付師のヤツなんだ。楽しみにしてろよ」
やがて演技を終えた勇利が観客の拍手を受けて戻ってくると、それまで彼の演技を見守っていた純がユーリの前に近寄ってきた。
「どうやった?勇利の演技」
「古臭いトコもあったけど、かえって新鮮だったぜ。カツ丼、コンパルは馬鹿みたいに上手ぇもんな」
斜に構えながらもそこに隠れた賞賛の言葉を確認した純は、嬉しそうに微笑んだ。
「次はユリオくんの番やな。…これまでホンマに有難う。ユリオくんのお蔭で、僕いっぱい勉強させて貰うたわ」
「礼を言うのは俺の方だ。サユリがいなかったら、俺はショーどころかヒトの気持ちも何も判んねぇクソガキのままだった」
言いながら、ユーリは純の黒い瞳を真っ直ぐ見つめて来た。
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