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【YOI】『少年』の最期【男主&ユーリ】

第3章 『少年』の最期


「ち、近ぇよ!何だよ!?」
「ユリオ、前髪ちょっと長すぎない?」
「…あ?ああ、切りに行ってる暇なかったからな。しょうがねえから、適当にピンで留めとくわ」
「でも、演技中にピンがリンクに落ちたら大変だよ。…少しだけじっとしててくれる?」
椅子に腰掛けたユーリの前に立った勇利は、思いの外慣れた手つきで金色の前髪を備え付けの櫛で何度か梳くと、彼のノーブルな額に沿って編み込んでいった。
「何でお前が…って顔してるね。ふふ、僕小さい頃バレエ教室の発表会があると、先生から『アンタも覚えなさい』って年下の女の子達の髪の毛の編み込みを手伝わされたんだ。男子は人数少なくて支度も簡単だしね」
しかし、髪を取る勇利の指をはじめ間近での囁きや息遣いに、ユーリは柄にもなくドギマギしてしまった。
氷上以外では穏やかな焦げ茶の眼差しが、真っ直ぐ自分の髪に注がれる様を一度だけ盗み見ると、目を閉じてその心地良い感触に身を任せる。
やがて、毛先をユーリの耳の後ろで固定した勇利は、やや上を向いた状態で目を伏せたユーリに視線を移すと、「やっぱりヴィクトルと同じで、ユリオも睫毛が長いなあ」と思いながら、彼に声を掛けた。
「ぅわっ!?だ、だから近ぇって言ってんだろ!ブタ!」
「どうしたの?はい、これで大丈夫だよ」
「お、おぅ。あ…『アリガトウ』」
「そう言えばこの頃ユリオ、時々日本語話すようになったね」
「語学教室に通い始めたんだよ。日本はフィギュアスケート人気あるし、新たなファン開拓とサービスも兼ねてな」
昨年末の長谷津で純に頼んだ事をはじめ詳細はぼかして伝えると、「若いのにユリオは偉いね」と勇利が感心したように呟く。
「…こっちの気も知らねぇで」
「ん?」
「何でもねぇよ。見てろよ、お前がロシア語覚えるよりも先に、俺が日本語ペラペラになってやるから」
「あはは、それは僕も負けてられないなあ」
20代とは思えぬ勇利の幼い笑顔に、ユリオは1つだけ様々な感情の混ざった息を吐いた。

その後、内心テンションMAXのリリアにメイクをされ、傍目には美少女と見紛う程の姿と化したユーリは、勇利やヴィクトル達と一緒にリンクに繋がる通路を進む。
「おっ、どこのレディかと思いきやユーリ・プリセツキーじゃないか」
すると、そんなユーリの耳に聞き覚えのある声が届いた。
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