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【YOI】『少年』の最期【男主&ユーリ】

第3章 『少年』の最期


アイスショー当日。

純は『2人のユーリ』の手伝いをする傍ら、かつて現役時代に面識のあったクリストフ・ジャコメッティをはじめ、海外から招待されたスケーター達とも会話を楽しんでいた。
「君はまったく変わらないね、純」
「クリストフは、えらい進化の遂げ方したなあ。人によっちゃBボタンキャンセルしたくなる程の」
「でも純だって、俺が持ってたイメージと随分違ってて驚いたよ。去年のジャパンナショナル以来、ヴィクトルからしょっちゅう君の話聞いてるし」
「…あのデコ、日本のアイスショー来た後真夏の京都で溶かしたるわ」

『子供時代から今この瞬間までのスケートと、自分自身』をテーマとしたユーリは、今回かなりラフな格好をしていた。
真っ白な縄編みのセーターにスリムのボトムと、練習中は純の私物である黒いストールを借りていたが、その後リリアが「こちらの方が脱ぎ着し易いし、ユーリを美しく見せる事が出来るわ」と、ワインレッドを基調としたチェック柄のマントを調達してきたのだ。
伸びた髪も手伝い、中性的なイメージが強くなっている鏡の前の自分に眉を顰めていると、背後から衣装を着た勇利が声を掛けてきた。
「カツ丼、今回はそっちでいくのか。『豚にも衣装』だな」
「ひどいなあ。まあ、EXはこの後日本でのアイスショーや他でも滑れるし、両方試してみようと思うんだ」
『フィギュアスケートの原点回帰』のテーマに沿って、中世の貴族調衣装を主張する純と、やはりジャンプもあるので機能性を重視したシンプルな衣装を推すヴィクトルとで散々揉めた末、「どちらも着て滑りたい」という勇利の言葉に、両方試して勇利自身や観客にどちらが良いか判断して貰おうとなったのである。
今回は純の案が採用され、昨シーズンのEX『離れずにそばにいて』の時とはまた違ったデザインの、白いフリル付きシャツにダークブルーのジャケットを羽織った勇利は、アップにされた前髪や後ろにリボンと共に着けられたローテールのウィッグも手伝って、異国から来た貴公子のようであった。
早くなりそうな鼓動を懸命に誤魔化しながら、いつもの減らず口を叩くユーリだったが、勇利に鏡越しに覗き込まれた瞬間、短い悲鳴と共に胸が高鳴るのを覚えた。
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