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【YOI】『少年』の最期【男主&ユーリ】

第2章 今までの君と、これからの君。


数秒後、ユーリの耳に届いたのは電話越しの笑い声だった。
『らしくもないな。随分と、大人しくなったじゃないか』
「な、何だよ!茶化すなよ!俺は真剣に…」
『そうか。ならば、今後は俺もお前の望むような対応をさせてもらうとしようか』
続けられた言葉を聞いて、ユーリは「やっぱり、俺の事ガキだから見逃してた部分あったんだな」と訊く。
『少しだけな。何だかんだ言って俺の方が年長者だし』
オタベックですらこれなのだから、きっと勇利やヴィクトル達は余計そうなのだろう。
勇利のちょっと困ったような笑顔を思い出した後で、純の伏し目がちに説教をする姿が脳裏に浮かんだユーリは、今回の経緯についてオタベックに説明する。
『…なるほど、それは良い経験をしたな』
「色んな意味でガキから卒業しろ、ってずっとつきっきりで今回のプロを作ってくれたんだ。そいつへの感謝も含めて、明日はガチでいくつもりだ」
『俺達は、スケートでしか上手く自分を表現出来ないからな。だが、きっとお前の気持ちはその人にも通じるだろう』
「…そっかな。そうだといいな」
純の笑顔と「素敵やで」という賞賛の言葉を想像しながら、ユーリは口元を綻ばせた。
『明日は頑張れよ。成長したユーリを直に観れないのは残念だが』
「多分どっかしらで動画上がるだろうから、それでも見てくれよ」
『ああ、次にお前に会うのが楽しみだ』
今まで聞いたよりも、オタベックの声に感情が籠もっているのに気付いたユーリは、心底嬉しそうな笑顔になった。

「ごめん、寝てたよな?…ちょっと声、聞きたなって」
ベッドに寝転がりながら、純は恋人の藤枝に電話をする。
「人を教えるって、ホンマ難しいな。つくづく自分の甘さと、貴方の大変さを痛感したわ…うん。帰ったらまた色々教えてな…え?…アホ、そういうんと違う」
藤枝の揶揄に仄かに顔を赤くさせながら、純はスマホを持ち直す。
「いつか、スケートあるなしに関係なく一緒にロシアに来ような。ここは、思ったよりもずっとええ所や」
恋人からの囁きを聞いた後で、純は普段は誰にもしない甘えた声を出すと、通話口に向かって小さく唇を鳴らせた。
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