• テキストサイズ

【YOI】『少年』の最期【男主&ユーリ】

第2章 今までの君と、これからの君。


怒涛のような日々が過ぎ、いよいよ明日のアイスショー本番を行う会場での最終確認やリハーサルが行われた。
純は、最初は勇利の新作EXの様子をヴィクトルと一緒に見学や確認をした後で、ユーリの元へ移動した。
「ユリオくん、お待たせ!」
「そんな待ってねえよ。カツ丼とのリハはもういいのか?」
「肝心なトコのチェックは済ませたから、後はデコに任せたわ」
今回勇利が滑るEXプロは、『フィギュアスケートの原点回帰』と純が言ってたように、チェンバロ演奏によるバッハの音楽に乗せながら、ジャンプは勿論の事コンパルソリーの要素やステップなどがふんだんに盛り込まれていた。
どちらかというとスローテンポにも関わらず、中だるみせずに魅せてくるのは、普段から基礎練習を怠らない勇利だから出来る事である。
本番の衣装をどうするかでヴィクトルと言い争いをしていた純と、そんな2人を懸命に宥める勇利の姿を遠くに眺めながら、ユーリは同年代の彼らの交わりをほんの少しだけ羨ましく思っていた。
ノービスやジュニアの頃から他の選手達よりも頭一つ抜き出ていたユーリには、同年代の友人といった存在がなかった。
これまでは仲間などいなくても良いと考えていたユーリだったが、昨シーズンのGPFや特にこの数日での経験から、何処か物寂しい想いも感じるようになっていたのだ。

「おい、ユーリ。そろそろ出番だぞ!」
「おう」

ぶっきらぼうだが素直な返事が返ってきて、一瞬ヤコフは虚を突かれた顔をする。
そして、そのままヤコフの横を通り過ぎたユーリの頭の位置が、僅かに以前よりも高くなっているのに気付くと、隣で全てを悟っているような表情のリリアと、無言でユーリの背を見守る純に視線を移した。
「お前は…まさに今この時のユーリの為だけに、プロを作っていたのだな」
「…はい。今までの彼の為と、これから来るだろう試練にも彼が打ち克てるよう、願いを込めました」
「──青臭いな。だが…今のユーリにある意味相応しいプロだ」
続けられた呟きに純は思わず目を見開き瞳を潤ませそうになったが、「仮にも振付師なら、ワシよりユーリの振りを確認せんか!」と、リリアがさり気なく笑いを噛み殺しているのにも気付かず、ヤコフは僅かに紅潮しながら怒鳴り散らした。
/ 30ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp