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【YOI】『少年』の最期【男主&ユーリ】

第2章 今までの君と、これからの君。


翌日。
漸くリリアから解禁を言い渡されたらしきヤコフがユーリと合流し、純の作ったプログラムを仕上げる為に指導を行っていた。
「うちのユーリに滑らせるプロとしては稚拙だが、ショーまで日もないしオフシーズンのEXならこんなものだろう。駆け出しにしては頑張った方じゃないか?」
ムッツリとした表情のままひと言ボソリと目の前で呟いてきたヤコフに、純は「有難うございます。僕もまだまだ勉強が必要やと思い知らされました」と会釈を返した。
「あれでも貴方に感謝しているのよ」とリリアに耳打ちされ、純は小さく頷きながらこの場はヤコフ達に任せると、久し振りにじっくりと本来の目的であった勇利の元へ移動した。
「待たせたなあ、勇利。特に昨日は迷惑かけて悪かったわ」
「ううん、純もお疲れ様。何か色々凄かったね」
「あれくらいでへばるなんて、体力なさすぎじゃない?」
「デコは黙っとれ。…僕が勇利におぶって貰うてたのが、そんなに羨ましかったんか?」
「なっ、そんな事ない!」

昨日、満身創痍の純は医務室へ向かう通路をユーリに支えられながら歩いている所を、偶然勇利達と出会った。
只ならぬ純の様子と彼を支えるユーリの危なっかしさに、暫しすったもんだした挙げ句、勇利が純を背負って医務室まで運んでいく事となったのだ。
「待ってくれ勇利!僕、歩ける!歩けるから!」
「そんな足取りや顔色で言われても説得力ないよ。この方が早いし」
「お願いやから止めて!疲れも吹っ飛びそうな位、背後からの突き刺さるような視線が怖い!」
その後、渋るユーリを「ユリオがいると却って純が休めないよ」とヴィクトルと勇利が連れ出し、医務室に1人残された純はベッドで休息を取りながら、改めて今回の反省と今後について考える一方で、これまで自分が過ごしてきた時間を脳裏に反芻させていた。
大怪我からの逃亡を経てスケートを再開した当初、想像以上の身体の動かなさやもどかしさに「逃げた事で、自分はなんて無駄な時間を過ごしたんだ」と自嘲混じりに零した純に対して、コーチの藤枝は「人生に無駄なツモなんざ1つもねえんだよ」とバッサリ斬り捨ててきたのだ。
当時は「何アホな事言うてるんやこのヒゲ」と思ったが、今なら彼の言葉の真意が良く判った。
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