• テキストサイズ

【YOI】『少年』の最期【男主&ユーリ】

第2章 今までの君と、これからの君。


「俺は…もう二度とガキ臭え理由で勝手な真似はしねえ。やるにしてもキッチリ筋だけは通す。まずは、俺の為にここまでしてくれたサユリに応えてみせる。つか、やんなきゃ男が廃るだろうがよ!」
「…美しさは、忘れぬようにね。これまでの感情のみで行動する『子供の』貴方は、たった今死にました。今後は、貴方を正真正銘シニアの選手として接していきますので、そのつもりで」
僅かに感情の込められたリリアの言葉に、ユーリは思い出したように彼女に尋ねた。
「何で、俺とサユリにここまでしてくれんだ?」
「…愚問ですね。振付師として、貴方に無様な滑りをさせる訳にはいかないからです」
「けど、俺は」
「貴方は、先日私に誠意を見せてきました。そして、私は貴方の謝罪を受け入れた。それだけの事です」
「…」
「──ただし、2度目はないわよ」
口調は厳しいが、自分を見るリリアの瞳がいつもより穏やかな光を帯びているのに気付いたユーリは、少しだけ肩を竦めた。

その後、どうにか無事にプログラム用に編集し直されたピアノ五重奏の録音までこぎつけると、純はメンバー達の拍手や「マラジェッツ」の褒め言葉に掠れた声で「スパシーバや…」と返すや否や、2つ並べられたピアノ椅子の上に横倒れになった。
「サユリ!」
慌てて純の傍へと駆け寄ったユーリは、数時間に及ぶ演奏その他で目の下にくまをこさえた純の、憔悴しきった様子を心配そうに見守る。
「大丈夫か?」
「あはは、流石に疲れたかな。けど、ちょっと休めば平気や」
「しっかりしろ!今、医務室に…」
「ああ、そこまで大袈裟にせんでも」
言いながら肩を貸そうとしたユーリだったが、勇利よりも上背のある純の身体を支える事は出来なかった。
立ち上がるも直後、ふらつきながらピアノ椅子に尻餅をついたユーリは、己の非力と不甲斐なさに唇を噛みしめる。
その時、
「君の腕に掴まらせてくれるか?」
純は、自分の両腕をユーリの左腕に絡ませると、もう一度立ち上がった。
そのままゆっくり進みながら、ユーリは純にボソリと囁く。
「…その内に、ちゃんと支えてみせるからな」
「有難う。君はこの数日だけでも随分大きなった。今のユリオくんは、とっても素敵やで」
純の言葉に、ユーリは溢れそうになる涙を懸命に堪えていた。
/ 30ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp