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【YOI】『少年』の最期【男主&ユーリ】

第2章 今までの君と、これからの君。


翌日。
早速大まかな構成を纏めた純は、ユーリに概要を記したメモを渡すとリンクに立った。
「一部ジャンプは抜かせて貰うけど堪忍な。今だけ僕は、君と同じ16歳や!」
純は両手を大きく広げながらユーリに笑いかけた後で、音楽をスタートさせる。
「ドヴォルザークのピアノ五重奏、第2番のスケルツォか」
「ピアノ曲なら純の十八番だし、ユリオの昨シーズンのFSもそうだったから、取っ付き易いんじゃないかな?」
リンクの別の場所にいたヴィクトルと勇利も、練習の手を止めると彼らの姿を見守る。
弦楽器の軽快なテーマを追いかけるようにピアノが鳴り出すと、純は何処か子供のような表情で口元に笑みを浮かべながら、氷上を舞い始めた。
そんな純を目で追いかけているユーリの脳裏に、いつしか遠い昔の記憶が蘇ってくる。

『ユーリくん、待ちなさい!』
『ユーラチカ!何処に行くんだ!』
『だって爺ちゃん、こんなに綺麗なんだよ!雪じゃないのが、キラキラ光ってる!』
『それはダイヤモンドダストだ。危ないから早く戻って来んか!』
地元のモスクワでスケートを始めて間もない頃、幼いユーリが屋外のリンクの上で見たダイヤモンドダストは、まるで宝石のように輝いていた。
祖父や当時のコーチが止めるのも聞かず、その美しさにすっかり魅了されてしまったユーリは、寒さも忘れて自然が織りなす氷の結晶の中を回り続けていたのだった。
(あそこにいるのは、ガキの頃から今までの俺だ…)
ここに来るまで辛い事や厳しい事も沢山あったが、それでもユーリがスケートを止めなかったのは、決して生活や家族の為だけではなかった。
(そうだ、俺は…)
暫く忘れていたスケートへの想いを再認識したユーリは、気が付くと、演技を終えた後で呼吸を整えている純の傍へと移動していた。
「早く俺にも滑らせろ!滑らせてくれ!」
「勿論や。これは君のプロ。納得いかんトコあったら、遠慮なく言うてな」
ユーリの目の輝きを見て、純は満足そうに頷きを返すと微笑んだ。

振りの手直しや一緒にステップやエッジを確認していた純は、ほんの少しだけユーリが浮かない顔をしているのに気付いた。
そんなユーリの様子に純が首を傾げていると、背後から厳しい女性の呼び掛けが響いた。
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