第15章 秀徳 対 誠凛
蒼依side
負け……た…?
秀徳が…私達が……?
「きゃーっやったー!!やったー!!」
「今度こそ本当に、勝ったー!!」
誠凜の歓喜の声が、頭の中で反響する。
縁は膝の力が抜け、へたり込んだ。
真太郎は目を閉じていた。
高「整列だ。行こうぜ」
高尾君が真太郎に話しかけ、整列する。
みんな顔を歪めている。
…頭の中めちゃくちゃだ…。
縁「………」
縁は目を見開いている。
蒼「…縁。大丈夫?立てる?」
縁はふらふらと立つと、誠凜を見た。
誠凛は飛んだり跳ねたり大騒ぎ。
蒼「…戻ろう」
縁「…そうだね」
戻ると、やっぱり空気は重い。
真太郎、大丈夫かな?
っていないし。どこ行ったんだ?
蒼「高尾君。真太郎、どこ行ったか知ってる?」
高「ん?ああ、さっき出てった」
………。
見に、行くか。
会場には居なかった。
外、かな?確か、土砂降りだったけど…。
行こう。
折り畳み傘を持って外に出ると、雨は思ったより強かった。
真太郎…真太郎…。
あ、いた!!
傘もささずに立っていた。
風邪ひくって…え…?
真太郎の頬に一筋のしずく。
雨じゃない。
泣い……てる…?
今まで私は真太郎が泣いたところはおろか、弱音を吐いたところも見たことはない。
その真太郎が泣いてる。
…無敗…。
その単語が頭の中に浮かんだ。
この言葉は、私に密接している言葉No.1だった。
武道においても、バスケにおいても。
私は持っていた傘もささずに真太郎に歩み寄った。
蒼「…真太郎…」
緑「蒼依か。何しに来た。傘もささずに。それでは濡れてしまう。さっさと戻るのだよ」
蒼「…もう十分濡れてるよ…」
雨に紛れて涙が溢れた。
蒼「あれ?あれ?」
拭っても拭っても止まらない。
緑「…」
蒼「ごめんね…。私がやって負けたわけじゃないのに…真太郎のほうが悔しいはずなのにね…」
緑「………ギュッ」
蒼「……!?」
緑「…すまない…約束…守れなかったのだよ…」
何年か振りに、私は泣いた。