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もう、なにも怖くない

第5章 秀徳高校にて


ハァ…ハァ…
過呼吸になり始めた…。やっぱり無理だったか。
いや、せっかく蒼依が必死で作ってくれたチャンスだ。無駄になんかできない。
私は覚悟を決めて、話し出した。
「はじめまして。片桐縁と申します。え…と。特技…は…バスk…じゃなくて楽器…バイオリン、です。人付き合いが苦手でしばらくは馴染めないかもしれませんが、どうぞ、よろしくお願いいたします」
よ、よし。言った…。
危うく特技にバスケをあげるとこだった…。
結局心臓病のことは言わなかった。嘘。[言えなかった]か。
突然、四方八方から、
「かわい~い!」
「すげー!超美人!」
などと声があがった。
思わぬ反応に、私はどうすればいいかわからなかった。
松永先生まで、
「ほらほらみんな~?告白は後にしなさいよ~?」
などと乗るので、私は完全に頭が働かなくなった。
何秒、あるいは何分たっただろうか。完全に虚無のかなたに行った私を見かねてか、松永先生は、
「さて、そろそろおふざけは止めましょうか」
とその場を鎮めた。
私もようやく我に返り、松永先生を見た。松永先生はニコッとすると、ぐるりとクラスを見渡した。
「あなたの席も決めなきゃね。ん~…あっ。高尾君!君の隣、空いてる~?」
高尾と呼ばれた男子は、
「はいー、空いてまーす」
と笑いながら返した。
松永先生は私に向き直って、
「あそこがあなたの席よ。教科書とかは高尾君に見せてもらってね」
と言い、行くようにすすめた。私はうなずいて、席に向かった。座る直前にチラリと高尾と呼ばれた男子を見た。

人懐っこそうな横顔は、なんとなく私を安心させた。

この人なら私でも親しめそう…

私が席に座った途端、クラス中の人達が、私の周りを取り巻いた。震えが体を走る。
「どこからきたの?」
「バイオリンやってるんだって?なに弾いてるの?」
「髪長いね~。最後に切ったのいつ?」
など。

私は数々の質問に答えていった。いつの間にか1時間目は終わっていた。
そして、いつの間にか、人見知りの恐怖は消えていた。
その時は気付かなかったけど…ね。


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なんだかいきなり長くなってしまいましたね…。読みにくかったらごめんなさい!
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