第10章 んじゃ、そういう肩書きで
by蒼依
高尾side
オレ達は、校舎裏から教室に帰ろうとしていた。
誰も何も言わなかった。
オレの頭のなかは、さっきの男子の発言が鳴り響いていた。
『いつもヘラヘラしててさ』
『あいつら超うぜぇじゃん』
オレ、そんな奴なのか……?
オレ、そんなウザい奴なのか…?
不意に、縁ちゃんのことが頭をよぎった。
話したい。縁ちゃんと、2人きりで、あのときみたいに。
高「なあ、真ちゃんと蒼依ちゃん。ちょっと先行っててくれねーか?」
緑「……?ああ、わかったのだよ」
真ちゃんは蒼依ちゃんと2人きりで歩いていった。
縁「高尾…君?なにを…きゃっ」
縁ちゃんが言い終わるのも待たず、オレは縁ちゃんを引き寄せ、抱きしめた。
ギリギリと腕に力を込めていく。
縁「…っ!高尾…く…いた…い…です…」
オレは少し力を抜いた。
高「なあ、縁ちゃん。オレって縁ちゃんの目にはどうみえてるの?」
縁「え…?もしかして、さっきの、聞いてましたか?」
高「……ああ」
再び蘇る、あのセリフ。
『いつもヘラヘラしててさ』
『あいつら超うぜぇじゃん』
縁「私にとっては、高尾君には良いところしかありません」
意外な発言に、オレはつい縁ちゃんをまじまじと見つめた。
縁「いつもヘラヘラしてるというのは、いつも笑ってるってこと。だから私は、あなたが好きになれたんです。私は、性格が根暗だから、あなたみたいなタイプといると落ち着く。とりわけ、高尾君は蒼依にそっくりだから」
縁「だから、自分に自信を持ってください。あなたが明るく笑顔で接してくれることで、幸せになれる人がいるんですよ。和…也君」
高「っ!!!」
縁ちゃん…が、オレを名前で?
縁ちゃんはオレの体に手を回し、わずかに力を入れた。
そしてすぐに真っ赤になって、離れた。
縁「さ、教室に戻りますよ。ご飯食べないまま休み時間、終わっちゃいます」
スタスタ歩いていく縁ちゃんをオレは本当に愛おしく思えた。
オレは縁ちゃんの手を握ると走り出した。
高「なら手繋いでこーぜ!!」
幸せだった。