第9章 発覚そして始まり
私が流れ続ける涙と格闘していると、ぐいっと手を引かれた。
ドンっと何かにぶつかったと思ったら、背中に手が回り、頭を押さえつけられた。
さっきより強く抱きしめられ、私は戸惑いを隠せなかった。
高「ごめん、ごめんな」
上から声がふってくる。
なんで、なんで謝るの…?
あなたにはなにも関係ないことなのに…。
縁「なぜあなたが謝るのです?あなたにはなにも関係ないことです」
高「オレ、昨日コクった時、縁ちゃんの苦しみに気付いてやれなかった。縁ちゃんに、さらに苦しい思いをさせちまった。ごめん、ごめんな」
いつもハスキーだった高尾君の声は、今や静かな悔しさを帯びているような気がした。なんで…なんで…?そんなのわからなくて当たり前だよ…。高尾君が謝る必要なんてないよ……。
縁「謝らないでくださいよ…。高尾君には、なんの落ち度もない…。なにも悪くない…のに」
ついに嗚咽をたえきれなくなった。
縁「うぅ…うぐっ…ひっぐ…」
高尾君はなにも言わず、私を抱く手に力を込めた。
もう、ムリ…。長い間、9年もの間押さえつけてきた気持ちが、一気に外に溢れだし、私は声をあげて泣き出した。
縁「うぁぁぁあぁああっ…」
もう止まらない。
『死にたくない』『死ぬのが怖い』
9年間押さえつけてきた気持ちは、泣けば泣くほど増幅し、とどまりを知ることなく、涙となって流れ続けた。