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もう、なにも怖くない

第9章 発覚そして始まり


私達は屋上に来た。手すりに寄りかかって、私は話しだした。

縁「私、余命2年なんです」

高「2年……!?」

縁「私はもともと心臓病でした。でも最初は良性だったんです。その時、家族でバスケをやったりしました。その時が私にとって、最も幸せな時間でした。
けど、長くはなかった。両親は、出掛け先で殺人事件に巻き込まれ、他界しました。なんで殺人事件なんかに巻き込まれなければならなかったんだと、なんど泣き叫んだかわかりません。
4歳から病院暮らしだったけど、学校には行ってました。
思い出すのも嫌なくらい、酷いものでした。毎日のように、ただでさえ嫌なこの目と髪を罵られ、両親のことを嘲笑われ、病気のことでからかわれる。
そんな日々は、7歳の時の、私の心臓病の発作で終わりました。
良性だったはずの私の病気は、度重なったストレスによって悪性になっていたのです。
医者に余命を伝えられた時は絶望しました。
私は床から離れなくなり、9年が過ぎました。医者に、せめて余命を楽しむよう、高校通学を許され、ここを選びました」

はあ、と一息つき、続けた。

縁「私、生きることを諦めていたつもりでした。みんなどうせ死ぬ、と開き直っていたつもりでした。けど…」

性懲りもなく溢れ出ようとする涙をこらえる。

縁「高尾君に会って、わかりました。私は開き直ってなどいない。私の気持ちは『死にたくない』『死ぬのが怖い』それだけです。あの時から変わらない、いや、より強くそう思う」

こらえきれなかった涙が、一滴伝った。

縁「生まれて初めて想い人ができたから…その人と離れたくなかったから…」

涙は堰を切ったように溢れ出る。どんなに拭っても止まらない。

縁「だから…その人の…告白を…断った…。本当は…本当は…」

途切れ途切れになりながら、私の本当の気持ちを伝えた。

高尾君は何も言わなかった。

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