第5章 人生最大のピンチです
放課後。クラスのみんなは友達同士でしゃべったり部活へ行く用意をしたりと思い思いに過ごしている。
「はぁ・・・」
そんな中、私は一人ため息をつきながら窓の外を眺めていた。
どうしてムカつく人のことばかり考えてしまうんだろう。
山崎宗介。あれから数回あった合同練習では、なぜか毎回のようにばったりと出くわしてしまった。あれでも一応先輩なので「お疲れ様です」と私が大人の対応をすると、あっちは「おうお疲れ、いちご」などと返してきたりして・・・その度に怒ってはいるんだけど、いつもあのニヤリとした意地の悪い笑いではぐらかされている・・・
こんなにあいつのことばかり考えてしまうなんて、腹が立ちすぎておかしくなってしまったのだろうか。
・・・ほら、また。あいつの顔を思い浮かべたら胸がきゅっと少し苦しくなった。身体もなんかふわふわとして落ち着かない。どこかに飛んでいってしまいそうだ。
こんなに私が苦しんでるのに、今頃涼しい顔してるんだろうな・・・ホントに腹が立つ・・・
・・・でもそんな山崎宗介だけど、泳ぎだけはすごい。すごくすごい(本当にボキャブラリーがないなあ)あいつが泳ぎ出すと、時間が止まってしまう。目が離せなくなる。怜先輩とも凛さんとも、他の誰とも違う山崎宗介だけにしかできないバタフライ。
・・・思い出したらまた胸が苦しくなった。ムカムカするなあ。いつも人のこと見下ろしてくるし(当たり前だけど)目つきも悪いし、やめてって言っても何回もいちごって言うし・・・
だけど・・・くしゃって笑うと印象が全然変わるんだよなあ。少しは親しみやすくなるからいつも笑ってればいいのに。でもにこやかな山崎宗介は気持ち悪いかもしれない。
・・・・・・ホントはどんな人なんだろう・・・もっと知りたいような・・・知るのが少し怖いような・・・