第5章 人生最大のピンチです
「ヒカリちゃんっ!」
「ぎゃわ!ご、江先輩!」
「あはは!『ぎゃわ』って。それに、ボーッとしてたけどどうしたの?」
いつの間にか江先輩が私の真横に立っていて、変な声が出てしまった。
「い、いえ!な、何でもないです。それより、今日は練習お休みなのにどうしたんですか?」
まさか山崎宗介のことを考えてました、なんて言えないから慌てて話を逸らした。それに用事もないのに江先輩が1年の教室に来るなんて、普段ないことだ。
「うん。あのね、放課後一緒に映画観に行かない?お兄ちゃんがチケット手に入れたって。んとね・・・これなんだけど、どう?」
そう言って江先輩が携帯でチケットの写真を見せてくれる。それはちょっと前から気になっていたものだった。
「あ!これ、観たいなって思ってたやつです!でも、私が行ってもいいんですか?えっと、お友達は・・・」
「ああ、花ちゃんはね、今日用事があるからダメなんだって。だから行こうよ、ヒカリちゃん」
「はい!だったらぜひご一緒したいです」
最近毎日部活だったし、一人でいるともやもやしてしまうから、気分転換にちょうどいいかもしれない。私は江先輩のお誘いをありがたく受けることにした。