第8章 桐嶋さんってこんなひと
3人が今日の献立や李が作ってきたお茶菓子の話で盛り上がっているといつの間にか九条邸に到着した。
お邪魔しまーすと、間延びした声の妹にガチガチに緊張している姉。
「お姉ちゃん?大丈夫だよ。そんなに緊張しないで?」
妹は、姉の冷めきった両手を包み込む。
姉「ありがとう。大丈夫。」
まさか、ここに可愛がっている妹が噂の九条と仲良くしていることに驚きと恐怖心がにじみ出ていた。
「いつも通りのお姉ちゃんなら、大丈夫だよ。仕事のことはわからないけど、壮馬さんもとってもいい人だし。」
妹との交友関係に、とやかく言える立場ではない。が、九条とどこで繋がったのか気になって仕方がない。壮馬さんと、名前で呼ぶほど親しいということ。
私の妹である以上、どこで誰に利用されるかわかったものでは無い。こんなことなら、包み隠さず話をして、自分で守るべきだったんじゃないかと頭にいくつもの後悔が浮かんでいた。
宮「九条さんは、書斎におられます。もう少しお仕事をされることになりそうですし。一先ず、泉さんのご用件の前に李さんはご挨拶されてはいかがでしょう?」
宮瀬の提案に、そうしますと言葉を紡ぎながらも手が冷めきっている姉の手を離したくないと手を離そうとしない。その姿にみなさんでいきましょうか、と宮瀬は述べた。
桐「いくぞー」
なにか考えているのか考えていないのかわからない桐嶋の声により誘導される
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九条家・書斎
コンコン
九「…どうぞ」
九条は、約束通り李の来訪を心待ちにしていた。本当は玄関で迎え入れたいとも思っていたが仕事がある以上仕方がない。
宮瀬の失礼します、の声で扉があく
何人か人間が部屋に入ってきたことに違和感を覚え顔をあげる
そこには予想していた人間ではないものが混じっており眉をすこししかめた。しかも、心待ちにしていた彼女が手をとっていたからだった
九「…李さんよくきてくれた。ネックレスもよく似合っている…さてどういうことか伺おうか。」
私は、壮馬さんからもらったアクセサリーをつけてきた。よくみているなとおもった反面、姉にそそがれた鋭いまなざしに姉を思わず庇う様に身を動かした。
なんともいがたい沈黙をやぶったのは紛れもなくこのきっかけをつくることになった、桐嶋宏弥だった。