第5章 お茶はお茶でも
庭内から戻る際、カナメくんに迎えに来てもらった経緯を説明した際壮馬さんから予想外の返事をもらった。
九「そういえば、わたしの連絡先を伝えてなかったね。」
少し何かを考える壮馬さんは、何かを思いついたかのようにこう述べた。
九「李さんには、申し訳ないのだが。実は前に友人が携帯をハッキングされたことがあってね。」
「え、それは大変でしたね。でも、どうして?お仕事の関係ですか?」
そもそも連絡先の話になんの関係が、と思いつつもこう答えた。
九「私の仕事の関係でね。どうもそういう目に周囲も遭いやすいようなんだ。もし差し支えなければ私用に連絡をとれるようにならできるのだが受け取ってもらえるかな。」
受け取る、という言葉に少しの違和感を覚えたが頷くと、準備していたかのようにスマートフォンが目の前に出された。
「!?え、でもこれはさすがに。」
まさか、スマートフォンを渡されるという予想外の展開に驚き、断ろうとしたが
山「李さん、パソコンとか得意な人?」
「え、あんまり。普通に大学で最低限使うぐらいしか。」
山「もし、ハッキングされても自分じゃ対処できないでしょ?それなら、なんとかしてもらえるこれのほうがいいと思うよ?」
「う、うーん。カナメくんも持ってるの?」
山「え、自分で対処できるから断ったよ。」
「………壮馬さん、ありがたくツカワセテイタダキマス」
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「カナメくんが普通とはちょっと違うと思ってたけどまさかあそこまでとは…」
「とりあえず、渡されたのでっと。」
渡されたスマートフォンには最低限のメッセージアプリと電話の機能、加えてとった写真を壮馬さん、宏哉くん、清志さん、カナメくんと共有できるといった機能が入っていた。
わたしの顔と指紋、と目の?なんちゃらって言われたので私にはきっと理解できないことなんだということを理解した。
「今日は、ありがとうございましたっと。無事清志さんとカナメくんに送って頂きました。また、お時間できたときにお茶でもっと。」
送信して、少しすると返信が帰ってきた。
『また。』 の一言。
壮馬さんらしいといえば、らしいのかもしれない。
少し安堵しつつ、眠りにつくことにした。