第2章 始まりは偶然にも
菅野さんの目つきは、初めの15分ぐらいで通常というか普通になっていた。
問題なしとでも思ったのかわからないけれど。
菅野さんの中で答えが出たのだろう。
荒木田さんは、はじめから最後までわたしを監視するような雰囲気はなかった。
監視というよりも、どこか不安そう…に近いようなさみしそうにも近いような。
うまい言葉が見つからないけれど、警戒ではないことが分かっていた。
しいて言うならば、気の毒だなという言葉かもしれない。荒木田さんの中で、姉と同じなら気の毒だとでも解釈したのだろう。
実際、明白に異なる答えを出したことで理解はしてくれたかもしれない。
「たしかに、荒木田さんの連絡先と菅野さんの連絡先登録しました。」
荒「ああ、何かあったら連絡してくれればすぐ来る。」
菅「俺たち、ヒーローだからね!」
「ありがとうございます。」
お手本の笑みをうかべ、ふたりを見送った。
「なにかあったら、すぐ来る……か。」
残酷とも感じられる……と思う時点で私はおかしいのかもしれない。
いつでも呼べ、と呼ばれて呼ぶ人間は早々にいないだろう。
あんな整った王子様みたいな人と連絡先を交換しても別に幸せと感じない。
相変わらず、私の心はひねくれているのかもしれない。
なんなら、関わりの種は消し去りたいタイプだったりもする。
「どうでもいいかな。」
そう呟いて携帯の画面を閉じた。