第10章 夏休み前の憂鬱(中原夢)
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「(....、この子中原先輩のこと好きなんだなぁ。)」
...これが青春、スクールライフというやつなのか。三年生に恋する一年生、なんて初々しいことだろう。
微笑ましい女の子の雰囲気に癒されながらカウンターの整理を続ける。
その後も次々と人がやって来たかと思いきや女の子たちばかりで、気付けば図書室は女の子で埋め尽くされていた。
やはり目当てはわたしの隣に並ぶ中原先輩だろう。みんな視線が其方に向いているため、聞かなくても分かる。
「(....、もしかして、私がいたら邪魔かな?)」
ハッとそれに気付いた時には図書室が女の子で埋め尽くされてから5分が経過したあたり。
気付いてからはいそいそと本の整理をしてくるふりをしてその場を抜け出そうとする。
しかし中原先輩がすかさず声を掛けてきた。
「どっかいくのか?」
「本の整理して来ようかと...、」
「俺も行ってやるよ。」
「え、いや、大丈夫です!
多分今日は本を借りる人多そうなので、中原先輩はカウンターをお願いします。」
「......、そうか。わかった。」
一瞬の間の後に、中原先輩はなんだか不服そうにそっぽを向いて再び返却リストを眺め始めた。
...もしかしてこの状況で中原先輩を一人にしないほうが良かったのだろうか。
女嫌いだとしたら私も嫌なはずだし別にそんな事はないと思うけど、だとしたら尚更あの不機嫌気味になってしまった理由がわからない。
そして私がいなくなった途端に声のボリュームが大きくなった。
気になって振り返ってみれば、5人グループの女の子達が中原先輩を囲んだ。
....確かあの人たちは二年生の中心メンバーだった気がする。
しかしここは図書室。静かにするのが原則なのに、こんなに煩ければ勉強している人にもいい迷惑だ。
中原先輩も注意しようとしているけれど、5人の女の子達に押され気味。
...此処は私がいくしかないか。
よし、と勇気を出してカウンターへと戻っていく。嫌われることを覚悟でその女の子達に話し掛ける。
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