第10章 夏休み前の憂鬱(中原夢)
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放課後、今日は図書管理担当が私なので、友達と別れて直ぐに図書室へと向かった。
普段はあまり来ないのだが、今日は気分的に行きたくなったので行ってみた。
廊下の暑苦しい空気も、図書室にはいれば冷房の効いた冷たい空気が肌を包む。
嗚呼、とても涼しい。
しかし早く来すぎたせいか、まだ図書室には誰も来てはいなかった。
この中で一人カウンターでポツンと座るのもあれなので、気になっていた本を探しに行く。
無駄に広い図書室をぐるぐる回りながらその本の列を探す。広いぶん本が沢山あるのは良いのだが、広すぎて探すのも一苦労だ。
「お、お、...、おー?ないぞ...?」
オ行についたのにも関わらずその本は見当たらない。最初からずっと目で追って探してみても、見つからない。
この間はあったはずなのに。
...まぁ、この間といっても2週間ほどだけど。
もしかして破棄されてしまったのだろうかと落ち込んでいると、何処からか扉の開く音が聞こえて来た。
きっと誰かが本を借りにきたか勉強をしに来たのだろう。
慌てて貸し出し口に戻ってみれば誰かが本を返しに来ていたらしく、そこに立っていた。
カウンターに急いで戻って、確認を取る。
と同時に見上げた顔は、とても整っていてつい見惚れてしまいそうだった。
変な人に見られないよう平然を保つ。
「あ、ごめんなさい、えーっと、学年とお名前は...?」
「3年4組の中原だ。」
「わかりました。中原さん...中原さん...、」
3年4組の貸し出しの紙を全て手にとって名前を探す。そうすれば5番目にその名前があったので、確認をとって返却の判子を押す。
借りていた本はシェイクスピアの本で、見た目によらずたくさん本を読む人なんだと失礼なことを思った。
「もう借りねェから戻しておいて構わねぇぞ。」
「はい、わかりました。」
青色の珍しい瞳と少し視線が重なる。
それにどきっとしている間に彼はスタスタと奥の方の本棚へと行ってしまった。
ほぉ、と感嘆を漏らして奥へと消えていった彼を思い出してみる。
中々見かけないオレンジ髪、そして目の色も青でまるで日本人とかけ離れすぎている。
なんというか次元が違うなぁ。
「(....、あれ、でもなんか今の人見たことある気がする。)」
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