第9章 似た者同士の扱い方(双黒夢)
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....さて、走り出したのはいいものの、隣の人は以前としてこちらを見ようとはしない。
....多分相当拗ねていることに違いない。
生憎人の褒め方だとか慰め方は未だに理解できていないため、どうするべきなのかと頭を悩ませる一方である。
とりあえず、声を掛けてみよう。
「....、太宰。」
「.....何。」
一応返事はしてくれるけれど、その声はまだ棘がある。変に刺激したらこちらに飛びかかってくる為気を付けなければならない。
しかし思考を回そうにも先程の合コンとやらで相当脳が疲れてしまっているのか、もう回転率が10パーを切ってきた。
こうなるとほとんど何も考えたくなくなるし、ただ音楽を聴いてぼーっとしていたくなるのだけれど、最大の難所である太宰慰め計画を超えていない為それは不可能だ。
....、ここはもう本人に直接聞くしかないか。
心の準備をするために深呼吸をして、太宰へ
問いかける。
いや、正しくは問いかけようとしたのだ。
「いっ、?!」
突然首元の服を引っ張られて、それと同時に首元に小さな痛みが走る。
驚いて太宰をみれば、首元に噛み付くようにして二回、三回と同じことをした後に全部の箇所をまとめて舐め上げた。
驚きのあまり思わず声をあげてしまいそうになるが、何とか堪える。太宰は満足そうに首元から顔を上げて、中也に聞こえないよう私の耳元で囁いた。
「....、君は私の物なのだよ。理解し給え。」
頰にキスを落として満面の笑みで私の手を握り、定位置に戻る。
唖然とする私に太宰は嬉しそうに笑みを浮かべている。
...、はて、何をされたのか。
突然のことで理解が追いついていないため、太宰が先程変なことをしたところを見て見た。
そこには赤黒いような斑点が三つほど首筋に並んでいて、さすがの私でも一瞬で理解した。
「(....、此奴、キスマークやりやがった。)」
睨みつけるように太宰をみれば、キスマークをつけられたことに満足しているのか先程の無表情は何処へやら、今はもうすっかりそんなそぶりを見せない。
...だいたいキスマークなどは独占欲の証ではないか。それにこういう類のものは恋人にやるべきところを私にやるなど理解の範囲を超えている。
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