第9章 似た者同士の扱い方(双黒夢)
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渡されていた鍵を中也に渡そうと腕を伸ばした途端、その腕を引かれる。
唖然とする暇もなく引き寄せられて、目の前には中也の綺麗な青い瞳が迫っていた。
ちゅ、
気づけば唇同士が重なり合い、普段普通のキスじゃ鳴らないのに何故か今はリップ音を奏でた。
ぺろりと唇を舐められて、放される。
途端に顔周りがぼっと熱くなって、見られないよう思わず顔を窓側に背ける。
「ちょ、中也ずるい!」
「うっせー。手前は抜けた時にでもやっただろうがよ。」
「あれは消毒!それとこれとは違う!柊もなんか言ってよ!
....って、なんで赤くなってるの?」
ミラー越しに私の顔が見えたのか、太宰はワントーン下げた声で尋ねる。
太宰はいつでも軽々しくキスしたりするからなんとも思わないのだけれど、中也は雰囲気や空気を読んでキスをするためその分ドキドキするのだ。
まるで初心にかえったみたいに。
「太宰は軽々しいんだもん。誰とでもやってそうだし気持ちが入らない。」
「はっ、言われてるぞ青鯖。」
馬鹿にするように中也がミラー越しににやりと笑う。
太宰はそれをきっかけに、一気に表情を豹変させた。
「....、柊、今すぐ降りて。」
ぞわりと背筋に寒気が走る。
どうやら中也の揶揄いが怒りに触れたらしく、声も冷たい。
マイナスに下がる空気に冷や汗をかいてしまいそうだ。
「...、やだ。降りたら殺されそう。」
「行かなくていいぞ。こうなったのは青鯖自身が悪ぃんだしな。」
「中也は黙って。」
「手前こそ黙れ。」
静まり返った車内は何ともまぁいずらいことだろうか。
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