第9章 似た者同士の扱い方(双黒夢)
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「っ、」
途端に触れられたのはあの男に触れられていた腰。突然のことに太宰を見れば、その瞳は暗く、何を思っているのかなんてわからなかった。
戸惑う私に対して、太宰はさするように腰を撫でる。その感覚が気持ち悪くて身をよじるけれど、それすらも許さないのか更に強く抱きしめてきた。
「...早く帰りたいんだけど。」
「...じゃあ、一回だけ、消毒だけさせて。」
「...、んっ、」
ぐっと両頬を掴まれて、噛みつくように唇を奪われる。
先程の男の行為が相当頭にきてるのか、息をする間も与えないほどに舌を絡めてくる。
くちゅ、といやらしい音が聞こえてきて、思わず顔をしかめる。
私はキスは嫌いではないけれど、深いキスは嫌いなのだ。唾液と唾液が交換されていく感覚がどうにも好きになれない。
それに嫌々と首を振れば、やっと離してくれた。
「っ、はぁ、」
「...、帰ろう。」
「嫌だ。あんたと帰ったらろくなことがないの。あそこにいた女とでも帰って。」
するりと腕を抜けて追いつかれない程度でお店に戻る。
自分たちのいた個室を開けば、先ほどよりも盛り上がっているのか密着度が半端なくなっていて、視線を逸らしながら急いで帰る用意をする。
「あれ、柊ちゃん帰るの?」
「うん...、かんなちゃん熱出しちゃったみたいで、薬買って帰らないと...。ごめんね誘ってくれたのに。」
「ううん!全然大丈夫だよ!」
「ありがとう!先抜けるね!」
足早にその場を抜けようとしたけれど、思えばここから家までは遠くて、帰るのにも電車を乗り継がなければならない。
急いでいるならなおさらだ。
ちらりと中也を見れば、此方の思っていることが伝わったのか送って行ってやる、と言ってくれた。
「えー、中也くん行っちゃうの?」
「ごめんな、此奴の家遠いんだわ。かんなの熱も心配だしよ。」
困り顔で女達を巻いて、お会計だけを残して私と中也は店を出た。
それと同時に現れたのは太宰で、まるで私たちが出ることを待っていたかのようだ。
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