第9章 似た者同士の扱い方(双黒夢)
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りり、りりり、りり、
我慢ならないときに鳴ったのは私は携帯。
それにみんなが動きを止めた。
私は慌てて携帯をとって、画面を確認する。
【かんなちゃん】と架空の人物が表示されているのを見て、慌てるそぶりを見せる。
それに横にいた男は眉をひそめた。
「だれ?」
「親戚の子....、今日うちに泊まりにくるって聞いてたんだけど...、ちょっと抜けるね。」
「いってらー!」
駆け足でその場を離れて、店の外に出る。
それと同時にその通話画面、否、アプリを閉じて電話しているそぶりを見せる。
誰かが見ていても完全に誰かと電話をしているように、独り言を言う。
「かんなちゃん?どうしたの?
ーー、えぇ?!熱?!....、うん、うん、
わかった、薬局で薬買って帰るよ。
お出かけ?そんなの気にしてられないよ!
とにかく帰るね、うん、大人しくしててね!じゃあ...、」
通話を切るふりをして慌てるようにバッグを取りに戻ろうとする。
こうすれば周りから一切へんな目でも見られないし、一石二鳥だなんて笑う。
......がしかし、途端に目の前に現れたのは太宰だった。
見透かしたような瞳に不味い、と感じたと同時に彼は私に問いかけた。
「さっきの男、どこ触った。」
疑問形ではなく、命令形。
どうやら私が抜けようとしていることは丸わかりのようだ。さほどそのことは興味がないのか、先程の男の話題を出してくる。
此奴は相当酔いが来ているのか、それともただの嫉妬か。
嫉妬だとしたら何でする必要があるのかは知らんが、とりあえず従っておくのがいいだろう。
「....、肩と腰だよ。それだけ。」
それだけ答えて太宰を避けるようにして店内に入ろうとするも、腕を引かれて路地裏へと引っ張られる。
何故こんなにも機嫌が悪いのかなんて知ったこっちゃない。
たどり着いた先で、太宰は黙ったまま私を腕の中に閉じ込めた。ふわりと香るのは女達の香水の匂い。
相当縋られたのかやけに匂いが染み付いている。
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