第8章 散る梅花(太宰夢?)
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「離して。」
「離さない。」
強く強く、まるで縋り付くようにして抱くもんだから私も少し気を許してしまいそうになる。
「これ以上私を苦しめたいの?」
「柊を苦しめてるのは柊自身だよ。」
「.....、煩い。」
大宰の言うことは毎回私の核心をつくものだから、本当に嫌だ。
まるで心を読まれているかのようで、思わず胸元に手を当ててしまう。自分の気持ちを悟られないようにと隠すのだ。
首元に巻かれた赤いマフラーは随分分厚くて、暖かい。逆に暑くなってしまいそうな程に。
「暑い。離して。」
「......、嫌だ。」
彼はこういう感情を表にした言葉は余り口にしない。だから余計に私を引きとどめる。
別に彼の事は最初から嫌いではなかった。
初めて会った時の印象は面倒くさそうな人。
2回目3回目に会ってからは話しやすい人。
それから後は友人にもなった。
織田作と安吾と大宰、そして私。
しかしたまに撮る3人の写真に私は映らなかった。
確かにその時にはもう大宰の異能が効くことは把握していたけれど、私はもう生霊なのだから映る必要はないと断ったのだ。
しかし3人はならばここにいる証明だけでも、と毎回撮る時に物を持ってきた。
例えば今みたいな赤いマフラー。
私にそれを手渡して、手にもたせた。
流石に巻いて撮ると心霊写真じみたものになってしまうので巻くのはやめておいたけど。
.....この赤いマフラーのせいで、楽しかった記憶が呼び覚まされる。
あの頃に戻りたい、4人でまた笑って過ごしたい。
そんな感情が溢れ出してくる。
やめてくれ、もうこんな感情は懲り懲りなんだ。
「....もう戻れないんだよ。」
「...、そんな事わかってるよ。」
「っ、じゃあ何で私に付きまとうの?!
誰かを失うのはもう懲り懲りよ!」
勢いよく太宰を突き放しす。
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