第6章 初めての感情です(中原夢)
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....嗚呼、回転式の椅子に腹が立ったのはこれが初めてだ。
更に近くなる距離に、息を飲む。
「柊、」
....嗚呼、そんな愛おしそうな声で私の名を呼ばないでくれ。
私はもう頭が沸騰して、更には爆発してしまいそうなのだ。
こんなにも感情が抑えられないのは初めてだし、なんせ制御が効かない。
そしてこの苦しいようでフワフワとしたこの気持ちをどこにやればいいのか、わからない。
「...なぁ、こういうのはきちんと向き合って言うのが礼儀ってもんだろ?
だから、手前の顔を見せてくれよ。」
ゆっくりと重ねられた手は、とても暖かくて、私よりも角ばっていて少しだけ大きい。
絡められていく指一つ一つがじんわりと彼の体温を運んでくる。
そして私の体温と混じり合って、心地よい温度に変わっていく。
そして顔から離れていく両手は、まるで恋人のように握られていた。
その光景だけでもこの上なく幸せなのに、更に目の前には大好きな人までいるのだから、幸せすぎてもう死んでしまいそうだ。
交わる瞳に、訳もわからずただ目頭が熱くなる。
「 柊、愛してる。」
「っ、...!」
その言葉は魔法のように私に放たれた。
好き、ではなく愛してる。
それがまたどうにも幸せ過ぎて、ポロリと一粒だけ涙がこぼれ落ちてしまった。
「っ...、ほ、本当に、私で、いいんですか?」
キラキラと光る彼の海のような瞳に、問いかける。
私なんか強くないし、異能力だって持ってないし、ましてや良いところなんて指で数えるくらいでも必死なのに。
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