第6章 初めての感情です(中原夢)
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肩で息をする私の問いに、彼は恥ずかしそう視線を外してから、再度私と向き合う。
そして呆れたように吐かれるその言葉と、コツンとあわせられる額同士。
「....手前だから、惚れたんだよ。」
それは私を支配するのには十分すぎる言葉で。
堰を切ったように溢れる涙を優しく拭ってくれる彼の手を、失わないようにぎゅっと握りしめて、少しの深呼吸。
こんな世界にいるからいつ失うかわからないこの手を、温かさを、ぐっと噛みしめる。
「わ、私も...、中原さんの事、あ、愛してます...!」
多分、私の今の顔は相当ぐちゃぐちゃだろうけど、彼は優しく笑ってくれた。
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嗚呼、この時が止まってくれはしないか。
どうか、このままで。
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初めての感情(完)