第4章 電車はやめよう(中原夢)
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何時もなら流されてくれるのに、何故か今日は機嫌が悪い。電車に乗る前までは良かったんだけどなぁ....。
ご機嫌斜めな中也の後ろを歩いていると、やがて分かれ道がやってきた。
右側の先にはコンビニが二つほどあるため、どちらか選択して選ぶことが出来るけれど、左側はコンビニは一つもない飲み屋街となっている。
左側の方が帰宅路としては明るいし、帰るにも安心出来るのだけれど、右側は反対にとても暗い。点々と置いてある街灯を頼りに帰らなければならないのが気分的に嫌だ。
私の家、といっても古臭いアパートだけれど、途中まで中也と帰宅路が一緒なのだ。
中也は大抵機嫌が悪いと1人で煙草を吸ったり何処かへ行ってしまうことが多いため、今は1人にした方が良さそうだ。
「...、じゃあうちコンビニ寄るからこっち側行くね。」
「.....。」
「...、じゃあね。」
沈黙を保ったままの中也を横目に私は右側の改札口を目指して歩き始める。
最後くらい返事してくれてもいいのに、相当機嫌が悪いのか口も聞いてくれやしない。
以前までは幾ら怒っていても家まで送ってくれたし、さよならの挨拶もちゃんとしてくれた。
しかし其れがないとなると相当のストレスがかかったか、あの満員電車で何かあったの二つに限る。
爪をいじりながら考え込んでいると、後ろからまるで唸り声のような声が響き渡った。
唸り声、といってもただ普通に私を呼び止めただけなのだけれど。
「..?、何?」
「....飯は作ってやる。」
「え、でもすっごい嫌そうな顔してるけど?」
「あぁ?」
かなり、本当にかなり睨みを効かせるくせにこう言うもんだから本当に中也は感情が読みづらい。
この時間人が通り過ぎないから良いものの、多分今誰かがすれ違ったら中也の睨みの餌食になるだろう。
...よかったこんな時間で。
「...、何でもない。
じゃあ、お言葉に甘えていざ中也の家にレッツゴー!」
私の急なテンションの上がりようにポカンとしている中也の腕を取り、反対方向に向かって早歩き。
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