第4章 電車はやめよう(中原夢)
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私と中也にとって食べに行く=泊まるであるため、速攻でご飯を食べて寝たいのだ。
いつもならベッドを使わせてくれるけど多分今日はソファーだろうな、なんて思いながらワクワク気分で改札口を出る。
「っ、ちょ、手前なんでそんなテンション高えんだよ!」
「え?だって中也のご飯美味しいからさ、何出るのかなーって思って。」
「今日は疲れたから冷凍だ。作るのは流石にだりぃ。」
「え、えぇ?!.....、まぁいいけど。」
お互い予想だにしないことがあり、顔からもかなり疲れが見られる。
顔を見合わせてみるけど、うん、やっぱり中也の目の鋭さが少し鈍い。けど、さっきは感情が爆発でもしたのか、ものすごい眼差しだった。
「あ、今日一緒に寝る?」
「っ、だから手前...!
.....はぁ、わぁったよ。」
中也の呆気ない返事に動きを止める。
何時もは「手前は女だろうが!」なんて喧嘩の時と真反対のこという癖に、今日に限っては諦めたような表情を浮かべている。
それに私は驚きを隠せず、思わず大声で聞き返してしまうけれど、それすらも煩わしそうに組んでいた私の腕を少し抓った。
もう本当に私は女なのか女じゃないのか、喧嘩をする時とでそろそろ何方かにして欲しいものだ。
居酒屋さんが並ぶ通りはいつもよりもやけに美味しい匂いが漂っている気がした。
きっとそれは私が空腹だから。
中也も同じなのか早く通り過ぎようと足早になる。私も合わせて歩いて行く。
同じ歩幅、同じ身長。
其れだけで少し嬉しいなんて思ったり思わなかったり。
彼が私の名前を全然呼ばないのは気に食わないけれど、いつかは手前じゃなくてちゃんと名前で呼ばれる日がくれば良いのにな、なんて夢見ていると、足がもつれたのか体がふらついた。
彼はそれを直ぐに支えてくれて、心配してくれる。
本当にマフィアなのか疑いたくなるくらいに善良な彼は、全くもって嫌な奴。
「中也のチービ!」
「....、手前後で覚えとけよ。」
疲れ果てたはずの体は、この時だけやけに軽く感じた。
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電車はやめよう(完)