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【WJ】短編 -2-

第1章 【甘】第二ボタン/松川一静・矢巾秀


「何だらしない顔してんだよ。」
「別にそんな顔してないし!」
「嘘つけ。松川さんのボタン見てニヤニヤしてただろ。そんなにいいかね、第二ボタン。」


 別に第二ボタンが云々とかで無く、一年生の頃から一番お世話になってる松川さんから記念品とも言えるような物を貰ったから嬉しいのであって、それが花巻さんや岩泉さんだったとしても同じ反応を取った。


「それ俺に寄越せ。」
「は?なんでよ。私が松川さんから貰ったんだし。」
「俺の代わりにやるから交換。」
「矢巾のボタンとかいらないし。」


 卒業する松川さんのボタンだからこそ意味があるのに、明日からも毎日顔を合わせる矢巾のボタンなんかいらない。


「俺、今日誕生日なんだけど。」


 それを言われると反論出来ない。矢巾が先輩達を慕っているのは私も良く知ってる。けど、それは私だって一緒。でも、矢巾は今日誕生日な訳で、矢巾が欲しいと言うのなら、譲った方がいいのかもしれない。松川さんには後で事情を説明しよう。優しい松川さんの事だから、きっと笑って許してくれる。


「大事にするって約束出来る?」
「おう。」


 仕方無く、握っていた松川さんのボタンを矢巾に渡そうとすると、矢巾の掌に、松川さんがボタンを置いた。


「何、矢巾。そんなに俺の事好きだったの?ほら、やるよ。」


 念願の松川さんボタンを松川さんの手から貰えたのに、矢巾はちっとも嬉しそうじゃない。第二ボタンじゃないからだろうか。


「逢崎。それ、俺が逢崎に貰って欲しくて渡したんだから、簡単に他の奴に渡したりしたら悲しい。」
「…ごめんなさい。」
「別に怒ってないよ。」


 いつもみたく松川さんは優しく笑ってるけど、なんかちょっと怒ってる風に見える。


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