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【WJ】短編 -2-

第1章 【甘】第二ボタン/松川一静・矢巾秀


「ケーキ取ってきてくれたんだって?ご苦労様。」
「松川さん…!」


 体育館の外に松川さん。私は松川さんの元へと走った。


「すみません、遅くなりました。」
「矢巾も誕生日なのにご苦労様。」
「コイツ一人で行かせたら危なっかしかったんで。折角の俺と松川さんのケーキ潰されたら洒落になんねーし。」
「落とさないよ!」


 体育館に入ると、及川さんを除く三年生も既に体育館に揃っていた。


「あれ?及川さんは?」
「アイツ今、追い剥ぎにあってるから置いてきた。」


 及川さん、性格はあんなんだけど、顔はいいから女の子にモテるもんね。追い剥ぎって言うのはきっと第二ボタン争奪戦だ。


「さっさと始めようぜ。」


 花巻さんのその声に促され、部員全員でバースデーソングを歌い、松川さんと矢巾がロウソクの火を消した。そして、皆でフォークを手に取り、ケーキをつつく。三年生のいないバレー部にもだいぶ慣れたけど、やっぱり三年生がいると雰囲気変わるな。でも、これも今日で最後なんだよな。なんて思うと、またじんわりと涙が浮かんできた。


「逢崎。ケーキ食べた?」
「はい、一口だけ。」
「そう。」
「明日から三年生に会えないのかと思うとやっぱり寂しいです。」
「また遊びに来るよ。」
「絶対ですよ?」
「あ、そうだ。逢崎、手出して。」


 松川さんに言われた通り、私は松川さんの前に手を差し出した。松川さんはその掌にボタンを置いた。


「貰ってくれる?」
「え?いいんですか?」
「うん。逢崎に貰って欲しい。」
「ありがとうございます。」
「松川さん、一緒に写真いいですか?」


 金田一くんに呼ばれ、松川さんは金田一くんの元へと向かった。私は、松川さんから貰ったボタン…多分、第二ボタンを見て、思わず頬が緩んだ。


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