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【WJ】短編 -2-

第1章 【甘】第二ボタン/松川一静・矢巾秀


「矢巾、これからのバレー部は引退した時にお前に任せたけどさ、逢崎の事は任せたつもりないから。」
「バレー部も逢崎の事も俺に任せて下さい。なので、安心して卒業して下さい。」


 二人共笑顔なのに、なんか、凄く怖い。


「花巻さん!花巻さん!ちょっと!」


 未だに残りのケーキをつついていた花巻さんを引っ張って、あれどうにかして下さいと、松川さんと矢巾を指さすと、あー無理無理と断られた。


「逢崎もさ、いい加減気付いてあげないと、松川も矢巾も可哀想だよ。まあ、そういう所がいいんだろうけどね。」
「ちょっと言ってる意味が良く分かりません。」
「まあさ、俺らは今日で卒業だけど、松川の事忘れないでやってよ。」
「そんなの当たり前じゃないですか。松川さんだけじゃなく、花巻さんの事だって忘れません。」
「あー…うん、ありがと。」
「あれ?もうケーキ無くなってるじゃん!」


 体育館に響いた及川さんの声に振り向くと、ブレザーのボタンだけでなく、ブレザー自体も身に付けておらず、Yシャツのボタンまで引きちぎられ、胸元を露わにした及川さんがボロボロな姿でやって来た。


「及川さん!?どうしたんですか!?」
「いやー、女の子って凄いね。なんかもう俺、女の子ちょっと怖いや。」
「それじゃあ風邪引いちゃいますよ!小さいかもしれないですけど、良かったらこれ着て下さい!」


 そう言って身に付けていたジャージを脱ぎ、及川さんに渡そうとすると、松川さんと矢巾に止められた。


「及川さん、逢崎のじゃ小さくて着れないと思うので俺のどうぞ。」
「俺のブレザー貸すよ。」
「まっつん、矢巾ありがとう。でも、俺、遥香ちゃんのがいいや。」
「それじゃあ逢崎が風邪引くだろ。」
「そうですよ。コイツ馬鹿ですけど、一応人間なんで。」
「ちょっと矢巾!」


 さっきまであまり良くない雰囲気だったのに、いつの間にかいつも通り息の合った松川さんと矢巾。やっぱり二人はこうでないと。



fin.

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