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いとし、いとし【短編集】

第21章 本丸大炎上【刀剣 蜻蛉切】


思えば、私にとっても息子にとっても久し振りの現世。


息子が3才の時に旦那を事故で無くした。

女手一つで育てなければならなくなったのに、

高校を卒業して、就職はしたものの、一年後には結婚。
その後妊娠出産をした私は、学もなければ、社会経験も乏しい。


勿論、そんな子持ち女がすぐに就職できる程、社会は甘くは無く、

困り果てた時に舞い込んで来たのが、この審神者という仕事だった。



母と審神者を両立するために本丸の皆が力を貸してくれた。



よき遊び相手なってくれる者、
絵本を読み聞かせてくれる者、
行儀を教えてくれる者、
草花の芽吹きや季節の移ろいから、慈しむ心を教えてくれる者も居る。

命を頂く事の有り難さを教えられ、気が付けば食べ物の好き嫌いも殆んど無くなった。

ただ甘やかすだけでなく、悪い事をすればきちんと叱ってくれる。



私は皆に頼りきり、
甘えっぱなしなのだ…。

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