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恩讐の花嫁 【Fate/GO 巌窟王 夢小説】

第6章 信頼


「わた、し……、自分、に……! 腹が、……立っ……、て……!」
 私は今、自分があたかも『被害者』のように泣いているが、それこそが間違いだ。私は紛れもなく、『加害者』側だろう。 自分が、マスターとして5人を繋ぎ留められなかったクセに、こうして泣いている。それも、アヴェンジャーの目の前で。もしかして私は、こうして泣いていたら、アヴェンジャーに優しくしてもらえるかも、なんて、心のどこかで思っているのかもしれない。だとしたら、いよいよ人間としても、最低だ。悲劇のヒロインぶるのも、いい加減にした方がいい。自分の駄目さ加減に、泣けてきて、どうしようもない。……でも、泣いてばかりもいられない。私がここで終わってしまえば、5人に謝ることすらできなくなる。だから、辛いけれど、生き延びないと。
 それに、今もこうして私と在り続けてくれているアヴェンジャーだけでも、『マスター』として、私が守らないと。カルデアを介して契約したサーヴァントは、仮に魔力切れや戦闘による損傷で現界を維持できなくなったとしても、カルデアに再召喚される。だから、また5人に会えると信じて、この今を乗り越えなければ。だから、涙を拭って、アヴェンジャーに向き直る。

「アヴェンジャー……、こんな私だけど、明日からも、力を貸してね。」
「今更だな、マスターよ。」
 アヴェンジャーは、さも当然、といった顔をしている。その短い返答は、私の心を支えるのに充分だった。だから、私も。
「ありがとう、アヴェンジャー。『マスター』として、今度は私がアヴェンジャーを護れるように、頑張るから。」
「……。」
 アヴェンジャーは、少し驚いた顔をしている。当たり前だ。自分の身すら自分で守れない弱小魔術師が、強大な力を誇るサーヴァントを護るなどと言っているのだから。それでも、いつもの笑い声で返してくれた。
「……、ク、クハハハハハ! そうだ、それでいい! 期待しているぞ、マスター!」
 アヴェンジャーは、心底愉快そうに体を揺らして、笑った。

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