第5章 シャドウ・サーヴァント

　端末を起動して、ここからアクセスを試みる。しかし―――――
「あれ？　繋がらない？」
「クハッ、それは無理だ、マスター。」
「どういうこと？」
「先程も言っただろう。この地の霊脈は、疲弊（ひへい）し、摩耗しきっている。それに、今の今まで、ここら一帯の霊脈は、あの滅茶苦茶な術式に犯され続けていた。マイナスの要素を取り払ったところで、すぐに回復はせん。」
「あ……。」
　ちょっとでも期待していただけに、正直なところ、落胆もある。

「だが、悪いことばかりではない。」
「え？」
　そう言うアヴェンジャーの顔は、少しだけ機嫌が良さそうだった。
「カルデアとの通信は依然繋がらないが、これで、『通信ができる可能性』がゼロではなくなったのだ。それに、これで、俺とお前のパスが蝕（むしば）まれることも無くなった。さらに、これ以上、仮に魔力を帯びた存在がこの地に流れ着いたとしても、それを“燃料”として吸収することは不可能となった。つまり、無尽蔵に“敵”が増えることも無くなったというワケだ！」
「あ、そっか……！」
　敵は今までに蓄積した“燃料”を消費することしかできなくなっているということか。今までに、私とアヴェンジャーは、それなりに敵を倒してきた。敵の“燃料”は、これ以上補給されることがなくなったのだから、敵は文字通り消耗戦を強いられることになる。……まぁ、それはお互い様な気もするけれど。それでも、今までは、明らかにこちら側が不利な状況だったのだ。それを打破できたのは大きいと信じたい。
「偶然の、突発的な事故などという可能性は、これで完全に消え失せた。この件、必ずや何者かの“意志”が介在している。」
　そうだ。アヴェンジャーの言う通りだ。サークルへの魔術的なハッキング、それは“偶然”に起こるものではない。しかも、“魔力吸収”がなされたということは、その魔力を利用する、意志を持った何者かが、必ず存在するということだ。