第5章 シャドウ・サーヴァント
「ほぅ……?」
アヴェンジャーは、何かに気が付いたように、顔を上げた。
「!!!」
追って、私もその気配気付く。多分、魔術師でなくても分かるぐらいの、強烈な気配。いや、“気配”などという言葉では、些(いささ)か可愛らし過ぎる。これは―――――、“怨念”か?
「マスター、この先に、強い反応だ。―――――――ククク……、クハハハハハハ!! マスター、よく覚えておけ!! これこそが、朽ち果てた魂が放つ、腐臭(ふしゅう)というモノだ!!!!」
『復讐者』のクラスたるアヴェンジャーは、きっとその正体を正しく嗅ぎ取っているのだろう。
「朽ち果てた魂……? ふ、腐臭……?」
「その通り!! なァるほど。 今の今まで、“結界”で、臭いモノに蓋をしていただけだったのだ!!」
「え、えっと……?」
アヴェンジャーは、何を理解しているのか。私には、まだ分からない。
「つまりな、マスター。此度(こたび)の敵は、極めて醜悪で無様な存在だということだ。心しておけ。」
つとめて冷静に、アヴェンジャーは言い放った。
「まぁいい。一旦、あの教会に戻るぞ。もうじき、日が暮れる。これ以上の探索は明日にするぞ。」
「あ、うん……。」
そう言ってアヴェンジャーは、教会の方向へと歩きだした。私も、遅れないように後を追う。
アヴェンジャーの背中に遅れないよう、ほんの少し、急ぎながら。
届かないその背中を、私はずっと、見つめていた。