第5章 シャドウ・サーヴァント
「ありがとう、アヴェンジャー。レーションと……、あれ? いい匂い?」
「コーヒーだ。インスタント故、味は落ちるがな。」
「わ、わぁ……。」
まさか、こんな荒廃した元・特異点で、コーヒーが飲めるとは思ってもみなかった。
「ん、おいしい。」
ありがたくいただいて、素直に感想を言う。
「昨日は結局、食事を摂っていなかっただろう。」
「うん。」
あぁ、そう言えば、そうだった気もする。正直、食事どころではなかったけど。
「無理にとは言わんが、食事や睡眠は、摂れるときに摂れよ。肉体の反応が鈍る上、魔力の質も下がる。」
「うん、そうだね。気を付ける。」
私は半人前の魔術師なのだ。こういう基本的なことを、怠(おこた)らないようにしないと。
そう思いながら、私は1食分の食事を完食し、アヴェンジャーの淹れてくれたコーヒーを最後まで飲み干した。